採れない看護師と、重い紹介手数料

看護師は募集をかけても応募が集まりにくく、多くの医療機関が採用を人材紹介会社に頼っています。ただ紹介会社経由の採用は、1人決まるたびにまとまった手数料が発生します。

人が定着せず入れ替わりが続くほど手数料は繰り返し発生し、紹介会社を切れば今度は応募が止まりかねません。この「採れないから紹介、紹介だから高い」という循環は、紹介会社をやめることではなく、運用の最適化で断ち切るのが現実的です。

この記事では、看護師採用にかかる費用の実態を公的データで確かめたうえで、紹介依存に陥る理由と、コストを下げる打ち手を順に解説します。

ほかの記事は一括エージェントの記事一覧から読めます。サービスの全体像はサービス概要にまとめています。


看護師採用のコスト・紹介手数料の実態

看護師1人の採用にかかる費用を、感覚ではなく公的な調査データで確認します。

全日本病院協会が2020年に332病院から回答を集めた調査によると、看護師を紹介会社経由で採用した場合の費用は、1人あたり平均で88.1万円でした。半分の病院が収まる中央値で見ても83.5万円です(全日本病院協会『2020年度 雇用における人材紹介会社に関するアンケート』)。

病院の受付カウンターと医療現場の様子
写真: Tetrakis Sphericon / Pexels

1人あたり80万円台は、看護師1人の月給の数か月分に当たります。しかも、この費用は1回採るたびにかかります

同じ調査では、紹介会社を経由した看護師の採用が病院全体で6割を超えています(施設割合65.7%)。多くの病院が、この費用を日常的に負担している状況です。

参考までに、同じ調査での医師の手数料は1人あたり平均332.5万円で、看護師より一段高い水準でした。職種によって相場は異なりますが、紹介会社経由の採用がまとまった固定費になる点は共通しています。医師の手数料が高くなる理由と下げ方は医師採用の紹介手数料で詳しく解説しています。

紹介手数料がこの水準になる理由

手数料が高く感じるのには、制度上の理由があります。

人材紹介の手数料には、法律で上限が決まっている方式と、決まっていない方式の2つがあります。上限が決まっている「上限制」では、採用した人に6か月で支払う給与の11.0%(免税事業者は10.3%)が上限です。

ところが実際には、各社が国に届け出た料金表で決める「届出制」が多く使われており、こちらには料率の上限がありません(厚生労働省『職業紹介事業の業務運営要領』)。

そのため、紹介会社ごとに料率が大きく違っても、それ自体は制度の範囲内です。言い換えると、料率は交渉や選び方で動く余地があるということです。

この点は、記事後半の打ち手につながります。手数料の相場や仕組みは人材紹介の手数料相場と「高い」の本音でくわしく整理しています。

なお、この手数料を払うのは採用する施設の側です。看護師本人から取ることは、原則として認められていません。


看護師を採用できず紹介依存になる理由

手数料を下げる前に、自前で採用できず紹介に頼る理由を整理します。背景を押さえると、打ち手の優先順位が見えてきます。

理由はおおきく3つあります。

1つ目は、看護師をめぐる獲得競争です。求人数に対して、応募する看護師が足りていません。

看護師・准看護師の有効求人倍率は、全国で3倍を超えています(令和4年度3.55倍。東京都『都内看護人材確保に関する参考データ』/出典:厚生労働省 職業安定業務統計)。1人の看護師を3つ以上の求人が奪い合う計算で、待つだけで応募が積み上がる職種ではありません。

2つ目は、入職者の離職です。日本看護協会の調査では、2023年度の看護職員の離職率は、正規雇用で11.3%、新卒で8.8%、そして中途で入った既卒採用者は16.1%でした(日本看護協会『2024年 病院看護実態調査』)。

中途採用ほど早く離職しやすい傾向です。採用しても離職が生じ、空いた欠員を再び採用で埋める繰り返しが、紹介手数料を何度も発生させます。

採れないため紹介に頼り、辞めればまた採り直す繰り返しが、手数料を積み上げます。

3つ目は、採用方法が紹介一本に偏りやすいことです。応募が来ないなかで「とりあえず紹介会社に出せば候補者が来る」状態に慣れると、ほかのチャネルを開く手間が後回しになります。

その結果、看護師の採用ルートは紹介会社だけに固定されていきます。料率の交渉力も弱まり、言い値に近い手数料を払い続けることになります。

ナースステーションで業務にあたる看護スタッフの様子
写真: RDNE Stock project / Pexels

看護師採用のコストが重いのは、市場の厳しさ・定着の難しさ・採用方法の偏り、この3つが重なった結果です。そのため打ち手も単一の施策ではなく、複数を組み合わせて依存度を段階的に下げる形になります。

採用が難しい構造と、応募が来ないときの打ち手は看護師採用が難しい理由と、応募が来ないときの打ち手で詳しく整理しています。


コストを下げる4つの打ち手

看護師採用のコストを下げる打ち手を、現実的に取り組める4つに分けて整理します。上から順に着手する想定です。

打ち手1|複数の紹介会社の運用最適化

まずは、いま使っている紹介会社の使い方を見直します。紹介会社をやめる前に、今の付き合い方で取りこぼしていないかを確かめる段階です。

複数の紹介会社と契約していても、実際に良い候補者を送ってくれているのは一部、というケースは少なくありません。直近半年で、どの紹介会社から何人の推薦が来て、面接・採用まで進んだかを書き出すと、稼働状況が把握できます。

推薦の多い紹介会社には、求人の魅力や求める人物像をていねいに伝えて関係を深めます。料率は他社と比較しながら交渉し、動いていない紹介会社は契約を整理します。この見直しだけでも、同じ採用数で払う手数料は変わってきます。

複数の紹介会社を横断で管理して推薦を増やす考え方は、エージェントコントロールとは(複数の人材紹介会社を最適化する方法)でくわしく整理しています。看護師に限らず、紹介会社との付き合い方の土台になる内容です。

この運用最適化が、4つの打ち手のなかで最初に着手すべき一手です。実際、一括エージェントが紹介会社の運用を代行した医療機関では、紹介数が約2倍に増え、2ヶ月で看護師2名の採用が決まっています。詳しい経緯は医療機関の導入事例にまとめています。残りの打ち手は、この土台に並走させる補助と位置づけられます。

打ち手2|公的な無料チャネル(ナースセンター)

意外と知られていませんが、看護師採用には手数料のかからない公的なルートがあります。

各都道府県のナースセンターが行う無料職業紹介です。看護師等の人材確保の促進に関する法律にもとづいて設置され、47都道府県すべてにあります。看護協会が運営しており、求人の登録から紹介までをインターネットの「eナースセンター」で行えます(日本看護協会『ナースセンターとは』)。

紹介会社のような成功報酬がかからないため、ここから1人決まれば、その分の手数料はまるごと浮きます。すべての求人がすぐ埋まるわけではありませんが、紹介一本にしないための無料の窓口として活用する価値があります。

ナースセンターは登録も紹介も無料です。紹介会社と並行して求人を出しておくだけでも、採用ルートが1本増えます。今日からでも始められる打ち手です。

打ち手3|ダイレクトリクルーティングによる直接アプローチ

求人を出して応募を待つのではなく、施設の側から候補者に直接声をかける方法です。看護師の登録データベースを使い、条件に合う人材へ施設側からアプローチします。

最初は、求人票や声のかけ方を整える手間がかかります。ただ、一度仕組みができれば、紹介会社を通さず候補者と直接つながれます。

手数料の形が成功報酬から利用料に変わるため、採用が続くほど1人あたりのコストを抑えやすくなります。すべてを今すぐ切り替える必要はありませんが、紹介依存を下げる中期の柱になります。

打ち手4|リファラル(職員紹介)の仕組み化

いま働いている看護師から、知人や元同僚を紹介してもらう方法です。

現場を知る職員が「ここなら勧められる」と考えて紹介するため、入職後のミスマッチが起きにくく、定着しやすい傾向があります。紹介手数料もかかりません。

紹介した職員へのお礼の仕組みを整えておくと、制度として定着します。中途採用が早く離職しやすいという課題に対しても、効果が見込める打ち手です。

看護師1名の採用に、紹介手数料いくら払っていますか?

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紹介会社を見直すときの確認ポイント

紹介会社を使い続ける場合でも、見直しのときに確認しておきたい点があります。料率の数字だけで選ぶと、あとで損失につながることがあるためです。

1つ目は、入職した看護師がすぐ離職していないかです。前述のとおり、中途入職の看護師は早めに離職しやすい傾向があります。

安く採用できても、半年で離職して採り直しになれば、結局コストはふくらみます。紹介会社ごとに、紹介された人材の定着状況を確認します。

2つ目は、早期に退職したときの返金規定です。紹介会社によって、入職後何か月以内に辞めた場合にいくら返還されるかが大きく異なります。

全日本病院協会の調査でも、退職時の返金額は紹介会社によってばらつきが見られました(全日本病院協会『2020年度 雇用における人材紹介会社に関するアンケート』)。

契約のときに返金の条件と期間を確認しておくと、早期離職時の負担を抑えられます。返金率や対象期間の確認ポイントは、人材紹介の返金規定とトラブルのチェックリストに詳しくまとめています。

下の表は、ここまでの打ち手をコストの観点で整理したものです。どれか1つに絞るのではなく、組み合わせて使う前提で見比べる形になります。

看護師採用チャネルのコスト比較

チャネル費用の形1人あたりの目安向いている使い方
紹介会社成功報酬平均88.1万円(紹介経由)急ぎで採りたいとき。複数社を運用最適化して使う
ナースセンター無料0円紹介と並行で出しておく無料の窓口
ダイレクトリクルーティング利用料(月額・成果)採用が続くほど低下紹介依存を下げる中期の柱
リファラル(職員紹介)お礼の費用程度低い定着しやすく手数料もかからない

紹介会社の金額は全日本病院協会『2020年度 雇用における人材紹介会社に関するアンケート』の紹介会社経由・看護師1人あたり平均。他チャネルは費用の形を整理したもの。

紹介会社をゼロにする必要はありません。急いで採りたいときの紹介会社は残しつつ、無料のナースセンターや職員紹介を並走させます。

採用ルートを増やすほど、紹介会社への依存と手数料は下がっていきます。紹介に依存した状態から抜け出す進め方は、人材紹介に依存しない採用へ(依存リスクと脱却ステップ)エージェントコントロールとはもあわせて解説しています。

医療スタッフが打ち合わせをしている様子
写真: Gustavo Fring / Pexels

まとめ|紹介の運用を、束ねて最適化する

この記事では、看護師採用のコストを下げる打ち手を整理しました。要点は次のとおりです。

  • 紹介会社経由の看護師採用は、1人あたり平均88.1万円(全日本病院協会2020年調査)
  • 採れない背景は、有効求人倍率3倍超の売り手市場と中途採用の高い離職率
  • 紹介一本に偏るほど料率の交渉力が落ち、手数料を払い続ける構造
  • 4つの打ち手の軸は複数紹介会社の運用最適化、無料のナースセンター・ダイレクトリクルーティング・職員紹介を並走
  • 紹介会社の見直しでは、料率だけでなく定着率と返金規定も確認

紹介会社をやめる話ではありません。いま使っている紹介の運用を束ねて最適化し、無料の入り口を足しながら、払いすぎを止める順序です。

とはいえ、複数の紹介会社の稼働状況の棚卸しや料率交渉、無料チャネルの並行運用を、通常業務と並行して回すのは容易ではありません。実務では、相応の手間と継続的な管理が必要になるでしょう。

この運用を人とAIで代行するのが一括エージェントです。看護師が採れて、しかも採用コストが軽くなる状態は、運用の最適化から段階的に近づけられます。

なお、介護施設の紹介手数料は介護施設の人材紹介手数料は下げられるで扱っています。

よくある質問

Q. 看護師1人を紹介会社で採ると、いくらかかりますか

全日本病院協会が2020年に332病院に行った調査では、紹介会社経由の看護師採用は1人あたり平均88.1万円、中央値で83.5万円でした。これは1回採るたびにかかる費用です。早期離職で採り直しになると、そのたびに発生するため、定着まで含めて考えることが大切です。

Q. 紹介手数料は値下げ交渉できますか

できる余地があります。人材紹介の手数料は、法律で上限が決まっている「上限制」(6か月給与の11.0%)と、上限のない「届出制」の2つがあり、実際は届出制が多く使われています。料率は各社が決めているため、複数社を比べながら交渉する余地があります。あわせてナースセンターや職員紹介など無料のルートを増やすと、紹介会社に頼る場面そのものが減らせます。

Q. ナースセンターは本当に無料で使えますか

各都道府県のナースセンターが行う職業紹介は、登録も紹介も無料です。看護師等の人材確保の促進に関する法律にもとづいて設置され、47都道府県すべてにあります。看護協会が運営しており、「eナースセンター」を通じて求人を出せます。成功報酬がかからないため、紹介会社と並行して使うだけでも採用コストを下げる助けになります。

Q. 紹介会社はやめたほうがいいですか

やめる必要はありません。急いで採りたいときに候補者が来る紹介会社は、使い方しだいで有効です。問題は、採用ルートが紹介会社一本になって料率の交渉力が落ち、手数料を払い続ける状態です。ナースセンター・直接採用・職員紹介を並走させて依存度を下げつつ、紹介会社は運用を最適化して賢く使うのが現実的です。

Q. クリニックや小さな施設でも取り組めますか

取り組めます。むしろ採用人数が少ない施設ほど、1人あたりの手数料の重みが大きく出ます。まずは無料のナースセンターに求人を出し、職員からの紹介の仕組みを整えるところから十分です。紹介会社は急ぎのときだけに絞り、料率と返金規定を確認して契約します。小さく始めても、払いすぎは止められます。クリニック・診療所の場合はクリニックの看護師採用ガイドにまとめています。


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