契約10社と、実際に動いている社数のギャップ

人材紹介会社と何社も契約していても、推薦が集まるのは一部の会社に限られます。契約書は10社、多い企業では50社や70社と並ぶ一方、今月動いた紹介会社をすぐに挙げられる採用担当者は多くありません。

社数を増やすほど、誰がどこまで動いているのかが見えなくなります。紹介会社を管理する発想のままでは推薦はさらに細り、発注側の運用を整えて動いてもらう姿勢への切り替えが欠かせないでしょう。

この記事では、エージェントコントロールの意味、紹介会社が動かない構造、自社でできる実践5ステップ、人とAIで運用を引き受ける代行という選択肢までを解説します。

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エージェントコントロールとは

エージェントコントロールとは、複数の人材紹介会社(エージェント)を横断的に管理し、推薦が増えるように運用を最適化する取り組みを指します。

「コントロール」という言葉からは、紹介会社を上から押さえつける取り組みに見えます。実際の中身はむしろ逆です。

発注する企業の側が情報の出し方や連絡のルールを整え、紹介会社が動きやすい状態をつくります。そのうえで紹介の量と質、選考のスピードを上げていく取り組みです。

複数の人材紹介会社とのやり取りを一覧で管理するイメージ
写真: cottonbro studio / Pexels

エージェントコントロールが必要になった背景

採用そのものが難しくなっています。働きたい人よりも求人の数が多い「売り手市場」が続いているためです。

国の統計でも、2025年度の有効求人倍率は1.20倍です。正社員にしぼっても0.99倍と、ほぼ1倍の状態が続いています(厚生労働省『一般職業紹介状況』)。

採用したい人材ほど、待っているだけでは応募が集まりません。その結果、人材紹介に頼る企業が増えました。

中途採用で人材紹介を経由して入社した人の割合は、この20年で大きく伸びています。2000年の0.9%から、2022年には5.9%まで上がり、6倍以上の伸びです(厚生労働省『採用経路の選択動向に関する調査研究報告書』2025年3月)。

そのぶん、紹介にかかる費用も増えています。人材紹介会社が受け取った手数料は、全国で年間およそ9,835億円にのぼります。

採用1件あたりにならすと約103万円です(厚生労働省『職業紹介事業報告書(速報)』)。1人決めるたびにこの水準がかかるため、何社も使うほど「払った分の成果が出ているか」が見えにくくなります。

さらに、付き合える紹介会社の数も増え続けています。人材紹介を手がける事業所は、全国で2万6千か所を超えました(2019年度。厚生労働省『労働市場における雇用仲介の現状について』)。

どこと組み、どこに力を入れるかを選ぶ時代になっています。

ここに落とし穴があります。契約する会社が増えるほど、窓口・返信・候補者の管理にかかる手間は一気に膨らみます。

Excelの台帳をつくっても、最新版が分からなくなったり担当者ごとにやり方がばらついたりして、すぐに追いつかなくなります。社数を増やしたのに推薦は増えない、という状態になりがちです。

契約社数を減らさずにこの状態を立て直す3つのルールは、複数の人材紹介会社の管理が破綻する理由と立て直し方にまとめています。

「ツールで管理する」と「運用で動かす」の違い

混同されやすいのですが、紹介会社の管理システムやATS(採用管理システム)を入れることと、紹介会社に動いてもらうことは別の話です。

システムでできるのは、どの紹介会社から誰が来たか、選考がどこまで進んでいるかを「見える化」するところまでです。見えるようになっても、推薦が自動で増えるわけではありません。

実際に推薦を増やすのは、担当者への返信、求人情報の伝え方、フィードバックの質といった人の運用です。

システムは「見える化」までしか担いません。実際に動かすのは人の運用です。

ここを人がやり切れるかどうかで成果が変わります。一括エージェントが担うのは、この運用の部分を人とAIで肩代わりする仕組みです。

AIが各社とのやり取りや候補者情報を横断で整理し、人が判断と関係づくりを受け持ちます。「管理ツールを渡す」のではなく「運用そのものを引き受ける」立ち位置です。


紹介会社が動かない構造

推薦が来ないとき、原因は紹介会社の怠慢に見えます。ただし多くの場合、実際の原因は紹介会社側の優先順位づけという単純な構造にあります。

紹介会社の担当者は、多数の求人を同時に抱えています。限られた時間をどこに使うかを判断する基準は、おおむね次の3つだと整理されています(日本の人事部 森数美保氏コラム)。

  • 決まりそうな求人か(選考がスムーズで、内定まで進むイメージが持てるか)
  • 候補者に紹介しやすい求人か(魅力や条件が伝わっていて、勧めやすいか)
  • 継続的な採用につながりそうか(今回だけでなく、次もありそうか)

この基準に照らすと、推薦が来ない会社にはいくつかの共通点が見えてきます。

書類選考の返事が遅い会社は、「ここに送っても進みが悪い」と判断され、後回しにされます。求人票が「経験者歓迎」程度の薄い情報だと、担当者は候補者に魅力を伝えられず、紹介しづらくなります。

面接後のフィードバックが一言で終わる、あるいは返ってこない会社では、担当者が次に誰を送ればいいか分からなくなります。

つまり、紹介会社が動くかどうかは発注する企業側の対応の質に大きく左右されます。放置すれば、紹介会社は決まりやすい別の会社に時間を回すでしょう。

その積み重ねが、「推薦が来ない」という結果になって表れます。

担当者がノートパソコンで候補者情報を確認している様子
写真: Amina Filkins / Pexels

エージェントコントロールの実践5ステップ

ここでは、自社で着手できる範囲を5つのステップに整理します。順番に進めるほど土台が積み上がる並びです。

ステップ1|契約している紹介会社の棚卸し

まず、契約中の紹介会社をすべて書き出します。そのうえで、直近3〜6か月で推薦が来たか、面接まで進んだか、内定が出たかを記録していきます。

棚卸しをすると、契約は10社あるのに実際に推薦をくれているのは2〜3社だけ、というケースがよくあります。

動いていない会社を責める必要はありません。どこに時間を使うべきかを事実ベースで把握するのが目的です。

ステップ2|紹介会社の「注力企業」になる条件

前の章で見たとおり、紹介会社は決まりそうで紹介しやすい会社を優先します。発注側は、その条件を満たす会社として認識される必要があります。

求人票は「どんな人に、何を任せ、入社後どう活躍してほしいか」が伝わる形に書き直します。年収レンジや評価の基準も具体的に伝えます。

担当者からの質問にはすぐ答えます。こうした積み重ねで、「この会社は紹介しやすい」という認識が育ちます。

ステップ3|一次対応スピードの引き上げ

返信の速さは、優先順位づけに直結します。書類選考の合否、面接日程の調整、合否連絡が遅れるたびに、候補者は他社に流れ、紹介会社の熱も冷めていきます。

理想は、推薦が来たらその日のうちに一次反応を返すことです。「確認しました、◯日までに結果を出します」の一言でも、担当者の安心感はまったく違います。

返信の速さは、費用をかけずに今日から上げられる打ち手です。社内で「推薦は当日反応」のルールを決めるだけでも、紹介会社の動きは変わります。

ステップ4|紹介会社ごとのKPI設定

感覚で「あの会社はよく動く」と言うのではなく、数字で見ます。紹介会社ごとに、推薦数・書類通過率・面接実施数・内定数を並べると、どこが本当に貢献しているかが見えてきます。

数字が見えれば、動いている会社には情報を厚く渡して関係を深められます。動いていない会社には、改善を依頼するか思い切って整理するかの判断ができます。

社数をむやみに増やすより、効く会社に資源を集中させるほうが結果につながります。

ステップ5|新しい紹介会社の開拓

棚卸しと数字の管理ができてくると、いま足りない領域も見えてきます。たとえば特定の職種や地域に弱いなら、そこに強い紹介会社を新しく開拓します。

開拓するときは、最初から自社の魅力と求める人物像を整理して渡せると、立ち上がりが早くなります。ステップ1〜4で土台ができていれば、新しい紹介会社もすぐに動きやすい状態で迎えられます。

つまずきやすいポイントは個別記事で深掘りしています。推薦が止まっている場合は紹介会社が動かない・推薦が来ない原因と打ち手、手数料の考え方は人材紹介の手数料相場と「高い」の本音、紹介頼みの見直しは人材紹介に依存しない採用へで解説しています。

契約している紹介会社、今月は何社が動いていますか?

契約社数と「実際に推薦が来ている社数」のギャップは、ほとんどの会社で起きています。どこから手をつければ推薦が増えるのか、御社の状況にあわせて無料でご提案します。まずは現状のお話からどうぞ。

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自社運用 vs 運用代行

5つのステップは、どれも自社でできます。問題は、これを毎日・全社分・継続してやり切れるかどうかです。

採用担当が他の業務と兼任していると、推薦への当日反応も全社の数字管理も、どうしても後回しになりがちです。

そこで選択肢になるのが、運用を外に出すやり方です。整理すると、大きく3つの方向があります。

エージェントコントロールの3つの進め方

項目自社運用管理システム(ATS)導入運用代行(人×AI)
契約社数の棚卸し自分で集計一覧で見える化代行が実施・更新
推薦への一次対応担当者が手作業通知は出るが対応は人代行が当日反応を担保
求人票の改善社内で都度テンプレ程度プロが各社向けに最適化
紹介会社別KPI手作業で集計自動で可視化可視化+改善まで実行
新規開拓・交渉担当者が個別に対象外代行が窓口を巻き取り
担当者の負荷重い中(運用は残る)軽い

スプレッドシート・ATS・特化SaaS・運用代行の4つの比較は人材紹介の管理システム比較にまとめています。

管理システムを入れると、誰がどこまで進んでいるかは見えるようになります。それでも、推薦への返信や求人票の改善といった「動かす」作業は社内に残ります。

見える化と運用は別物だからです。

運用代行は、この見える化のうえに、実際に動かす部分まで引き受けます。一括エージェントの場合、AIが各紹介会社とのやり取りや候補者情報を横断で整理し、人が当日反応・求人票の最適化・紹介会社との関係づくりを担います。

10社でも70社でも横断で運用を回す前提で設計しているため、社数が増えても担当者の手が止まりません。実際に紹介会社を入れ替えないまま紹介数を約2倍にした医療機関の導入事例もあります。

チームで採用の進捗を確認しながら打ち合わせをしている様子
写真: Sora Shimazaki / Pexels

念のため補足すると、運用代行は紹介会社を置き換えるものではありません。紹介会社は使い続けたうえで、やり取りを最適化して推薦を増やします。

あくまで紹介を「増やす」ための運用という位置づけです。


まとめ|紹介を増やすのは"管理"ではなく"運用"

この記事では、エージェントコントロールの意味と、紹介を増やすための運用の進め方を整理しました。

  • エージェントコントロールは複数の人材紹介会社を横断で運用最適化する取り組み
  • 背景にあるのは採用の売り手市場と、中途採用で年々高まる人材紹介の比重
  • 動かない原因の多くは発注側の返信の遅さ・求人票の薄さ・フィードバック不足
  • 実践は棚卸し → 注力企業になる → 一次対応の高速化 → 紹介会社別KPI → 新規開拓の5ステップ
  • 管理システムは「見える化」まで、実際に推薦を動かすのは人の運用
  • 自社でやり切れない場合は、人とAIで運用を引き受ける運用代行という選択肢

社数を増やすこと自体が目的化していないかどうかが、最初の確認点です。本当に効くのは、いま契約している紹介会社を動く状態にする運用のほうです。

ただし、5ステップを全社分・毎日続けるには相応の工数がかかります。兼任の採用担当が単独で回し切るのは難しく、その運用を人とAIで肩代わりするのが一括エージェントです。

導入前にデメリットもあわせて確認する場合は、人材紹介のデメリットと付き合い方にまとめています。

よくある質問

Q. エージェントコントロールと、紹介会社の管理システムは何が違いますか

管理システムは、どの紹介会社から誰が来てどこまで進んでいるかを「見える化」するツールです。エージェントコントロールは、その情報をもとに返信・求人票・関係づくりまで含めて推薦を増やす運用全体を指します。見える化だけでは推薦は増えないため、運用とセットで考える必要があります。

Q. 紹介会社は何社くらいと契約するのが適切ですか

決まった正解はありませんが、社数より「動いている社数」が重要です。契約は多くても、実際に推薦が来ているのが2〜3社だけ、という会社は珍しくありません。まずは棚卸しで動いている会社を把握し、そこに資源を集中させるところから始めるのが現実的でしょう。

Q. 推薦が急に止まったとき、まず何を見直せばいいですか

最初に確認するのは、書類選考や面接の返信が遅くなっていないか、求人票の情報が古くなっていないか、面接後のフィードバックを返せているかの3点です。紹介会社は決まりやすく紹介しやすい会社を優先します。発注側の対応が落ちれば、紹介会社の優先順位も静かに下がります。

Q. 運用代行を頼むと、今の紹介会社との契約はどうなりますか

そのまま使い続けられます。運用代行は紹介会社を置き換えるものではなく、紹介会社とのやり取りを最適化して推薦を増やす役割です。既存の契約を活かしながら、運用の手間だけを外に出す位置づけです。

Q. 人材紹介の手数料に法律上の上限はありますか

上限が決まっている制度と、上限のない制度の2種類があります。

法律で上限が決まっているのは「上限制」という方式です。この場合の上限は、採用した人に6か月で支払う給与の11.0%(免税事業者は10.3%)です。ただし実際には、各社が国に届け出た料金表で決める「届出制」が多く使われていて、こちらには料率の上限がありません。人材紹介の相場が、入社1年分の給与のうち30〜35%ほどと高めになるのは、これが理由です(厚生労働省『職業紹介事業の業務運営要領』職業安定法 第32条の3)。

なお、この手数料を払うのは求人企業の側です。候補者から取ることは、原則として認められていません。


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