介護の紹介手数料が、気づけば年間190万円に
介護職を1人、人材紹介会社を経由して採ると、手数料は平均で約89万円。100万円を超える施設も3割にのぼります。1件ずつは「採用が決まった費用」でも、人が入れ替わるたびに発生するので、施設あたりでならすと年間およそ190万円。気づけば、それだけのお金が採用に消えている計算です。
介護は本来、無資格・未経験からでも人を迎え入れられる、間口の広い職種です。看護師のように国家資格がなければ働けない世界とは、そこが違います。それなのに紹介費だけがかさんでいくのは、採用の入口が紹介会社に寄りすぎているサインかもしれません。
この記事では、介護の人材紹介手数料の相場を公的なデータで確かめたうえで、なぜ紹介費が毎年かさむのか、そして何から手をつければ払いすぎを止められるのかを、施設長・事務長・運営者の方向けに順番に整理します。紹介会社をやめる、という話ではありません。今の契約はそのまま使いながら、払いすぎだけを止める第一歩からです。
ほかの記事は一括エージェントの記事一覧から読めます。サービスの全体像はサービス概要にまとめています。
介護の人材紹介手数料は、いくらが相場か
まず、介護職を1人採るのにいくらかかるのか。ここは感覚ではなく、調べられた数字だけで見ていきます。
介護施設の団体が、会員施設に大規模なアンケートを行った調査があります。公益社団法人 全国老人福祉施設協議会(老施協)が2023年8月に実施したもので、有効回答は2,002施設。このうち、介護福祉士の資格を持つ常勤の介護職員を紹介会社経由で採用した430施設・920人について、1人あたりの手数料は平均で891,373円でした(全国老人福祉施設協議会『令和5年度 人材紹介手数料実態調査報告』)。

約89万円というのは、介護職1人の月給の何か月分かに当たる金額です。しかも、これは1回採るたびにかかります。同じ調査では、この手数料が100万円を超えた施設が430施設のうち142施設、割合にして33.0%に上りました。最高額は1人あたり220万円です。
同じ介護職1人でも、手数料に大きな開きがある
ここで気づくのは、金額の幅の広さです。下を見れば数十万円、上を見れば220万円。同じ介護職1人を採るのに、これだけの差がつきます。1施設あたりにならすと、年間の支払いは約191万円でした。採用人数が少ない施設でも、紹介経由が続けば年に何百万円という固定費になっていきます。
なぜ、これほど幅が出るのでしょうか。理由は、紹介手数料の決め方に2つの方式があるためです。ひとつは法律で天井が定められた「上限制」で、採用者に6か月間で支払う賃金の11.0%(免税事業者は10.3%)が上限です。もうひとつが「届出制」で、各社が国に届け出た料金表にそって請求します。実際に多くの紹介会社が採っているのはこの届出制で、料率に法律上の上限がありません(厚生労働省『職業紹介事業の業務運営要領』)。
だから、A社では想定年収の25%、B社では35%、といった差が、制度の範囲内で普通に起こります。裏を返せば、料率は選び方と交渉しだいで動くということでもあります。ここは後半の打ち手につながります。手数料の相場や仕組みそのものは人材紹介の手数料相場と「高い」の本音でくわしく整理しています。
なぜ介護の紹介費は、毎年かさんでいくのか
手数料を下げる前に、そもそもなぜ紹介費が一度きりで終わらず、毎年のように積み上がるのか。ここを押さえておくと、打ち手の優先順位が見えてきます。理由は、大きく2つに分けられます。
人手不足が構造的で、とくに訪問介護で激しい
ひとつは、介護職そのものの取り合いです。求人の数に対して、応募してくれる人が足りていません。介護関係の職種の有効求人倍率は、近年おおむね4倍前後で動いていて、全職業の平均(およそ1.2倍)を大きく上回ります(厚生労働省『介護人材確保の現状について』(福祉人材確保専門委員会 資料))。
さらに見落とせないのが、同じ介護でも施設系と訪問系で厳しさがまるで違うことです。厚生労働省の資料をもとにすると、令和5年度の有効求人倍率は施設で働く介護職員が3.24倍だったのに対し、訪問介護員(ホームヘルパー)は14.14倍。求職者1人に14件以上の求人が群がる、極端な売り手市場です(厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 資料)。とくに訪問系を持つ事業者にとって、自前で待っているだけの採用は、はじめから分の悪い戦いです。
人手が足りない流れは、この先も続く見込みです。国の推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人が必要とされ、2022年度の約215万人と比べると、2040年度までにおよそ57万人を新たに確保しなければなりません(厚生労働省『第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について』)。採り手が急に増える材料は、当面見当たりません。つまり、採用そのものを止められない構造があります。
高い手数料で採った人ほど、早く辞めていく
もうひとつが、定着の問題です。せっかく採っても、一定数が抜けていきます。介護労働安定センターの調査では、令和5年度の訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は13.1%でした(介護労働安定センター『令和5年度 介護労働実態調査結果』)。
ここで効いてくるのが、採用経路による違いです。同じ調査で、採用してから1年以内に辞めた人の割合を経路別に見ると、有料職業紹介(紹介会社)経由がもっとも高く、介護職員で25.7%。いっぽう、職員からの紹介で入った人は12.8%と、低い水準にとどまります(介護労働安定センター『令和5年度 介護労働実態調査結果(概要)』)。高い費用をかけて採った人ほど、早く抜けていく傾向が出ているわけです。
老施協の調査でも、これは裏付けられています。紹介経由で採用して退職した介護職985人のうち、566人(57.4%)が半年以内に辞めていました。半年で辞めれば、また採り直しになります。そのたびに、89万円の手数料がもう一度発生します。
いちばん高い費用をかけて採った人が、いちばん早く辞めていく。介護の紹介費が毎年かさむ理由は、採用そのものより、むしろ定着の側にあります。

需要が構造的に続き、しかも高い経路ほど早く辞める。この2つが重なるから、紹介費は一度きりで終わらず、毎年のようにかさんでいきます。だからこそ打ち手も、1つの方法で一気に解決するというより、紹介の使い方を整えつつ、辞めにくい入口を少しずつ増やしていく方向になります。看護師の採用コストを同じ枠組みで見た記事は看護師採用のコスト・紹介手数料を下げるにまとめています。
介護は「採る」だけでなく、「育てる・受け入れる」で確保できる
打ち手に入る前に、介護ならではの強みを確認しておきます。ここが、看護師採用との決定的な違いです。
看護師は国家資格がなければ働けないので、採用は基本的に「有資格者の奪い合い」になります。ところが介護は、無資格・未経験からでも働き始められる職種です(施設の介護職員の場合。訪問介護で身体介護を行うには、介護職員初任者研修以上が必要です)。資格を持たずに入職し、働きながら介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士と、段階的に資格を積み上げていく道筋が、制度として用意されています(厚生労働省『介護人材確保の現状について』)。
これは採用戦略に大きく効きます。89万円を払って介護福祉士を1人採る代わりに、意欲のある未経験者を迎えて育てれば、紹介費をかけずに戦力を増やせるからです。すぐに頭数が揃うわけではありませんが、育てた人は施設のやり方に馴染みやすく、定着しやすいという利点もあります。
もうひとつの入口が、外国人介護人材です。国は4つのルートで受け入れの仕組みを整えていて、合わせると相当な規模になっています。
外国人介護人材を受け入れる4つのルート
| 制度 | おおよその受入れ人数 | 特徴・向き |
|---|---|---|
| 特定技能1号「介護」 | 約44,367人(2024年12月末) | 一定の技能と日本語力を確認して就労。即戦力に近い |
| 技能実習「介護」→育成就労 | 約15,909人(2023年12月末) | 育成が前提。法改正で「育成就労」制度へ移行中 |
| 在留資格「介護」 | 約10,468人(2024年6月末) | 介護福祉士の国家資格を取得した人。長期就労を見込める |
| EPA介護福祉士候補者 | 約3,252人(2025年3月) | 経済連携協定にもとづく。働きながら国家資格を目指す |
ただし、育成も外国人受け入れも、体制づくりや資格取得の支援に時間がかかります。今日・今月の紹介費をすぐ下げてくれる打ち手ではありません。あくまで中期の柱として仕込んでおくもの、と位置づけておくのが現実的です。まず手をつけるべきは、いま払っている紹介費そのものの見直しです。
紹介費を減らす順番|まず運用、次に介護ならではの仕込み
打ち手はいくつもありますが、大事なのは順番です。今日いちばん早く効くのは、いま使っている紹介会社の運用を整えること。そのうえに、介護ならではの補助を乗せていきます。
最優先の一手|紹介会社の運用を束ねて最適化する
まず取り組むべきは、いま契約している紹介会社の使い方を見直すことです。やめる・切り替えるという話ではありません。今の付き合いのなかで、取りこぼしがないかを確かめる段階です。
複数の紹介会社と契約していても、実際に良い候補者を送ってくれているのは一部、ということがよくあります。直近半年で、どの紹介会社から何人の推薦が来て、面接・採用まで進んだかを書き出してみてください。動いている会社には、求める人物像や施設の魅力をていねいに伝えて関係を深め、料率も他社と比べて交渉します。逆に、動いていない会社は思いきって整理します。ただし、料率を下げることだけを目的にすると、紹介会社のなかで御施設の優先順位が下がり、推薦が後回しにされることもあります。金額と推薦の量のバランスを見ながら進めるのが賢いやり方です。
あわせて確認したいのが、早期に退職したときの返金規定です。老施協の調査では、紹介で採った人が採用から1か月以内に辞めたのに、手数料がまったく返ってこなかった施設が12施設ありました。返金の条件や期間は紹介会社によって大きく違うので、契約書を一度棚卸ししておくと、早期離職のときの痛手を減らせます。返金規定の見方は人材紹介の返金規定・返金ルールの読み方で具体的に解説しています。
こうやって複数の紹介会社を横断で管理し、推薦が増えるように運用を整えていく取り組みを、エージェントコントロールと呼びます。考え方の全体像はエージェントコントロールとは(複数の人材紹介会社を最適化する方法)にまとめました。この運用の立て直しこそ、金額として最も早く効く第一手です。
これを人とAIで代行するのが、私たち一括エージェントのサービスです。実際、一括エージェントが紹介会社の運用を代行したある医療機関では、紹介数が約2倍に増え、2ヶ月で看護師2名の採用が決まりました。これは医療機関での例ですが、「まず今の紹介運用を立て直す」という順番は、介護施設でも変わりません。
いまの紹介会社の使い方、ムダはありませんか?
複数の紹介会社の運用最適化を軸に、無料の公的窓口や育成採用の組み合わせまで。介護施設の採用コストを下げる進め方をまとめた資料を、無料でお送りします。
無料で資料を受け取るそのうえで並走させる、介護ならではの補助
第一手の運用最適化を土台に、介護だからこそ足せる入口を並走させます。すぐに全部やる必要はありません。効きはじめが近い順に、3つ紹介します。
1つ目は、無料の公的な入口を足すことです。各都道府県の福祉人材センターは、社会福祉法にもとづいて設置された無料の職業紹介で、福祉のお仕事というサイトから求人を出せます(厚生労働省『福祉人材確保対策』)。ハローワークも無料です。介護はもともと、こうした無料の入口がよく使われている業種です。介護職員の採用経路ではハローワークが21.8%、訪問介護員では職員からの紹介が31.1%を占めています(介護労働安定センター『令和5年度 介護労働実態調査結果(概要)』)。とくに職員紹介は、先ほど見たとおり定着がよく、手数料もかかりません。ここから1人決まれば、その分の紹介手数料はまるごと浮きます。
2つ目は、処遇改善加算を使って定着を上げることです。介護には、賃金を上げるための公的な加算があります。2024年6月から、それまでの3種類の加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。この加算は使いみちが決められていて、受け取った額は職員の賃金改善に充てる義務があります(厚生労働省『介護職員の処遇改善』)。一見すると採用の話とは遠く見えますが、賃金が上がって定着が良くなれば、「辞めては、また紹介で採り直す」という手数料の発生回数そのものが減ります。採用コストを下げる打ち手として、実は効き目が大きい仕込みです。
3つ目が、中期の柱として、無資格からの育成採用と外国人の受け入れを並走させることです。前の章で見たとおり、介護は育てて確保できる職種です。時間はかかりますが、この2つが回りはじめると、紹介会社に頼る場面そのものが減っていきます。紹介一本の状態から抜け出す進め方は人材紹介に依存しない採用へ(依存リスクと脱却ステップ)もあわせてどうぞ。

ただ、これらを主役にするより先に、いま払っている紹介費のムダを止めること、つまり第一手の運用最適化が、金額としては最も早く効きます。無料の入口も、育成も、外国人の受け入れも、あくまでその土台に並走させる補助と考えてください。
まとめ|紹介費は「運用」と「育てる仕組み」で軽くなる
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 介護福祉士を紹介会社経由で採ると、常勤1人あたり平均約89万円かかり、3割の施設では100万円を超えます(老施協 令和5年度調査)
- 紹介費が毎年かさむのは、訪問介護で14倍を超える構造的な人手不足と、紹介経由ほど早く辞めるという定着の問題が重なるためです
- 介護は無資格・未経験から育てられ、外国人受け入れの4ルートもある、間口の広い職種です
- 打ち手には順番があります。第一手は複数紹介会社の運用最適化。そのうえに、無料の公的窓口・処遇改善加算・育成採用・外国人受け入れを並走させます
- 紹介会社を見直すときは、料率だけでなく定着率と返金規定も確認します
紹介会社をやめる、という話ではありません。今の紹介の使い方を束ねて整え、辞めにくい入口を足しながら、払いすぎを止める。介護職が採れて、しかも採用コストが軽くなる状態は、ここから一歩ずつ近づけられます。
よくある質問
Q. 介護の人材紹介手数料は、いくらが相場ですか
老施協が2023年に2,002施設から回答を得た調査では、紹介会社経由で常勤の介護福祉士を採用した場合、1人あたり平均891,373円でした。100万円を超えた施設が3割あり、最高は220万円です。これは1回採るたびにかかる費用なので、早期離職で採り直しになると、そのたびに発生します。相場を見るときは、金額の平均だけでなく、採った人がどれだけ続くかまで含めて考えることが大切です。
Q. 無資格・未経験でも介護職として採用できますか
施設の介護職員であれば、無資格・未経験からでも採用できます。働きながら介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士と資格を積み上げていく道筋が、制度として用意されているためです。資格取得の支援を整えておくと、紹介費をかけずに戦力を育てられ、定着もしやすくなります。ただし、訪問介護で身体介護を担当するには介護職員初任者研修以上が必要な点だけ、注意してください。
Q. 外国人の介護人材は、どうやって受け入れるのですか
大きく4つのルートがあります。特定技能1号「介護」、技能実習「介護」(育成就労へ移行中)、介護福祉士の資格を取った人が就く在留資格「介護」、そして経済連携協定にもとづくEPA介護福祉士候補者です。合わせると相当な規模の受け入れが進んでいます。即戦力に近いルートから、働きながら国家資格を目指すルートまで性格が違うので、施設の体制にあわせて選びます。育成と同じく体制づくりに時間がかかるため、中期の柱として仕込むのが現実的です。
Q. 介護の採用で、紹介会社との取引はやめるべきですか
やめる必要はありません。急な欠員をすぐ埋めたいとき、紹介会社は今でも頼れる入口です。見直したいのは「紹介会社しか入口がない」状態のほうです。運用を最適化して賢く使いながら、無料の福祉人材センターやハローワーク、職員紹介、そして育成や処遇改善で入口を増やしていけば、紹介への偏りと手数料は自然と下がります。切るのではなく、束ねて整えるのが現実的な進め方です。
Q. 処遇改善加算を使うと、採用コストは下がりますか
間接的に下がります。処遇改善加算は賃金を上げるための公的な加算で、受け取った額は職員の賃金改善に充てる義務があります。賃金が上がって定着が良くなれば、「辞めては、また紹介で採り直す」という手数料の発生そのものが減っていきます。採用の場面だけを見ると関係が薄そうですが、紹介費を毎年かさませている早期離職に効くので、コストを下げる仕込みとして無視できません。
介護の採用コスト、紹介一本から見直しませんか
複数の紹介会社の運用最適化から、無料の公的窓口や育成採用、処遇改善による定着まで、御施設にあった採用ルートの広げ方を人とAIでご提案します。紹介会社はそのまま、払いすぎだけを止めて採用を前に進めましょう。無料相談からお気軽にどうぞ。
無料相談はこちら