求人を出しても、看護師から応募が来ない
求人媒体にもハローワークにも出しているのに、看護師からの応募が数か月ゼロ。結局、頼れるのは紹介会社からの推薦だけ。そんな採用が続いている病院やクリニックは少なくありません。
最初にお伝えしたいのは、看護師が採用できないのは、募集する側の熱意や工夫が足りないからとは限らない、ということです。看護師の労働市場は、求人を出して待つだけでは応募が来ない構造になっています。ただし、市場のせいにして手を止めるわけにもいきません。同じ市場の中で、紹介と応募をきちんと集めている施設もあるからです。
この記事では、看護師採用が構造的に難しい理由を国の一次データで確かめたうえで、応募が来ない原因を4つに分解し、どの順番で手を打つべきかを整理します。紹介会社をやめて自前の採用に切り替えましょう、という話ではありません。いまある採用ルートを、動く状態に変えていく話です。
ほかの記事は一括エージェントの記事一覧から読めます。
看護師採用が難しい3つの構造要因
最初に、市場の現実を数字で確かめておきます。「うちに魅力がないから来ないのだ」と思い込んだまま進むと、打ち手の順番を間違えるからです。
看護師1人を、2件以上の求人が取り合っている
看護師の有効求人倍率は、全国で2.41倍です(令和6年度。厚生労働省『職業情報提供サイト job tag』(出典:ハローワーク求人統計データ))。同じ令和6年度の全職業平均は1.25倍でした(厚生労働省『一般職業紹介状況』)。看護師はその約2倍、つまり1人の求職者を2件以上の求人が奪い合う市場です。応募が来ないのは、まずこの取り合いの中で埋もれているということです。
しかも、この不足は一時的な波ではありません。国の推計では、2025年の看護職員は需要188万〜202万人に対して供給175万〜182万人と、供給が需要に届かない見通しが示されていました(厚生労働省『看護職員需給分科会 中間とりまとめ』)。加えて、看護師学校養成所(3年課程)の受験者数は令和元年の20万3,524人から令和6年には14万2,069人へ、5年で約3割減っています(厚生労働省 検討会資料)。担い手の入り口が細っている以上、待っていれば楽になるという見通しは立ちません。

看護師が「そもそも少ない地域」で募集している
全国平均の話より効いてくるのが、地域差です。人口10万人あたりの就業看護師数は、全国平均で1,101.1人。最も多い高知県は1,757.8人、最も少ない埼玉県は827.0人で、差はおよそ2.1倍あります(令和6年末。厚生労働省『令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況』)。少ない側には神奈川県の836.7人、千葉県の837.0人と首都圏が並びます。人口の多い都市部ほど、人口あたりの看護師はむしろ薄いのです。
同じ「応募が来ない」でも、立地によって意味が変わります。看護師が薄い地域では、求人媒体を替えたところで母数が足りないままです。
その一方で、資格を持ちながら看護職として働いていない人は相当数います。厚生労働省の検討部会資料に掲載された研究班の推計では、65歳未満の潜在看護職員は平成30年末時点で約69.5万人とされています(保健師・助産師・准看護師を含む推計。厚生労働省 検討部会参考資料)。この層は求人媒体をこまめに見ておらず、家庭との両立やブランクへの不安が解けたときにだけ動きます。「市場に人がいない」のではなく、いまの募集のやり方では届かない場所に人がいる。そういう地域も多いはずです。
離職の重さが、施設の規模と種類で偏っている
採用の難しさは、辞められやすさと地続きです。日本看護協会の調査(2023年度実績)を規模別に見ると、正規雇用看護職員の離職率は99床以下の病院で12.6%、500床以上では10.4%。設置主体別では医療法人が14.4%と最も高く、公立は7.7%です。都道府県別でも東京都の14.2%が最高、岩手県と山形県の6.8%が最低と、はっきり差が出ています(日本看護協会『2024年 病院看護実態調査』)。
小規模で、民間で、都市部。この条件が重なるほど辞められやすく、採り直しの回数が増えます。つまり看護師採用の難しさは全施設に平等ではなく、中小の民間施設にいちばん重くのしかかる構造です。「うちだけが採れない」わけではない代わりに、待っていればそのうち採れる、も起きません。
同じ偏りは、在宅の現場でさらに鋭く出ます。看護職員が数人規模で回る事業所が多い訪問看護ステーションの人材不足では、欠員1人が訪問件数と夜間の当番に同時に効きます。
市場の厳しさは変えられません。変えられるのは、募集の届け方と、いまある採用ルートの動かし方です。
応募が来ない原因を4つに分解する
構造がこれだけ厳しくても、応募と紹介を集めている施設はあります。差がつくのは気合いではなく、点検できる項目です。自院の募集を次の4つで確認してみてください。
原因1|求人票に「この職場を選ぶ理由」がない
有効求人倍率2.41倍の市場では、看護師の側が職場を選びます。給与と休日と勤務時間を並べただけの求人票は、比較された瞬間に埋もれます。看護師が知りたいのは、夜勤が月に何回あるか、配属はどの病棟か、教育や復職のフォローはあるか、残業は実際どれくらいか、といった「働いたあとの生活」です。ここが書かれていない求人票は、条件が悪いから選ばれないのではなく、判断材料が足りないせいで選ばれません。
原因2|条件そのものより、見せ方で負けている
近隣と大きく変わらない給与でも、書き方しだいで印象は変わります。給与欄が下限だけ、賞与や手当の実績が不明、「経験により優遇」とだけあって幅が見えない。こうした求人票は、実際より条件が悪く見えます。取り合いの市場では、書いていない情報は「悪いから書いていないのだろう」と読まれるからです。逆に、モデル月収や夜勤手当の内訳まで書いてあれば、同じ条件でも比較の土俵に残れます。
原因3|募集チャネルが「待ち」に偏っている
ハローワークと自院のホームページだけ、という施設は珍しくありません。どちらも大事な窓口ですが、いずれも応募を「待つ」チャネルです。一方、紹介会社に登録しているのは、転職の意思がすでに固まった看護師です。そこに自院の情報が薄いままだと、いちばん動く可能性の高い層と接点が生まれません。とくに、紹介会社と契約しているのに推薦が月ゼロという場合、チャネルは「ある」のに「動いていない」状態です。ここは次の章で扱う、打ち手の中心になります。
原因4|欠員が出てから募集を始めている
看護師が1人辞めてから求人を出し、来月までに埋めたい。この進め方だと、募集は常に後手です。市場で人が動くタイミングと募集を出すタイミングが噛み合わなければ、どれだけ良い求人票でも見られる機会がありません。欠員後の短期決戦では選択肢も紹介会社頼みになりがちですが、日頃やり取りのない紹介会社は急な依頼ですぐには動けません。募集は「空いたら出す」ではなく、常に細く開けておき、辞める人が出る前から紹介会社との関係を作っておくものに変える必要があります。
応募が来ない4つの原因と点検ポイント
| 原因 | ありがちな状態 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 求人票の中身 | 条件の羅列だけで、働いたあとの生活が見えない | 夜勤回数・配属先・教育体制・残業実態が書かれているか |
| 条件の見せ方 | 給与は下限のみ。手当や賞与の実績が不明 | モデル月収と手当の内訳まで開示しているか |
| チャネル選択 | 待ちの媒体だけ。紹介会社は契約したまま放置 | 契約中の紹介会社が直近3か月で何人推薦したか |
| タイミング | 欠員が出てから慌てて募集を始める | 通年で募集を開き、紹介会社と日頃から関係を作れているか |

最優先の打ち手は、いまの紹介会社の運用最適化
4つの原因はどれも直せますが、全部を同時にやろうとすると現場が持ちません。順番を決めるなら、最優先はいま契約している紹介会社の運用を立て直すことです。
理由は2つあります。1つ目は速さです。求人票の改善や直接応募の整備は、効き始めるまでに時間がかかります。紹介会社には転職の意思が固まった看護師がすでに登録しているので、運用を変えれば最短で候補者に会えます。2つ目は、追加投資がいらないことです。すでに契約している会社を動かすだけなので、新しい媒体費も掲載料もかかりません。
やることは、難しくありません。
- 契約中の紹介会社を全社書き出し、直近半年の推薦数と面接数を棚卸しする
- 動いている会社に、求人票に書ききれない現場の情報(夜勤の実態、職場の雰囲気、求める人物像、過去の入職者の定着状況)を渡す
- 推薦への返信を当日中に返す体制を作る
- 面接後は合否だけでなく、理由まで各社にフィードバックする
地味に見えますが、紹介会社の担当者は「返事が早く、情報が濃く、決まりやすい施設」を優先して動きます。推薦が来ない契約は、たいていこの逆をやってしまっているだけです。推薦が来ない原因と直し方は紹介会社が動かない・推薦が来ない原因と打ち手で、複数社を横断で管理する考え方はエージェントコントロールとはで詳しく整理しています。
念のため書いておくと、これは紹介会社を替える話でも、やめる話でもありません。いまの契約はそのまま、使い方だけを変えます。実際、一括エージェントが紹介会社の運用を代行した医療機関の例では、各社からの紹介数が約2倍になり、2ヶ月で看護師2名の採用が決まりました。市場の厳しさは同じでも、運用しだいで紹介の量は変わります。
求人票と直接応募は、並走させる補助
紹介会社の運用を立て直したうえで、余力に応じて進めたいのが求人票の改善と、直接応募の受け皿づくりです。順番が後なだけで、やらなくていい話ではありません。紹介経由の採用が続く限り手数料はかかり続けるので、中期的には自前で応募を受けられる入り口も育てておくほうが健全です。
求人票は、原因の裏返しで直す
直し方は、先ほどの原因1と原因2をそのまま裏返せば足ります。夜勤回数・配属先・教育体制・残業実態を具体的に書く。給与はモデル月収と手当の内訳まで開示する。どの施設でも書ける「アットホームな職場です」を、自院でしか書けない事実に置き換える。ここで作った求人票は自院の募集だけでなく、紹介会社に渡す情報の土台にもなります。つまり第1の打ち手の効果も底上げしてくれます。クリニックに特化した戦い方はクリニックの看護師採用ガイドへ。
直接応募の受け皿は、中期で育てる
採用ページに看護体制や1日の流れを載せる。見学や職場体験の申し込みをホームページから受けられるようにする。ブランクのある看護師向けに、復職フォローの内容を明示する。こうした受け皿は、潜在看護職員のように「条件が合えば働きたい」層に効きます。すぐ応募が増えるものではないぶん、紹介運用と並走で少しずつ整えるのが現実的です。
なお、紹介手数料の水準や採用コスト全体の下げ方には、この記事では踏み込みません。看護師採用のコスト・紹介手数料を下げるで、病院団体の調査データをもとに別途整理しています。

まとめ|市場は変えられない。運用は今日から変えられる
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 看護師の有効求人倍率は2.41倍と全職業平均1.25倍の約2倍で、供給が需要に追いつかない状態は当面続きます
- 人口10万人あたりの就業看護師数には最大2.1倍の地域差があり、首都圏は全国平均を下回ります
- 離職率は小規模・民間・都市部ほど高く、採用の難しさは中小の民間施設に偏って重くのしかかります
- 応募が来ない原因は、求人票の中身、条件の見せ方、チャネル選択、タイミングの4つに分解して点検できます
- 打ち手の最優先は、いま契約している紹介会社の運用最適化です。求人票の改善と直接応募の受け皿は、その効果を底上げする並走の補助と位置づけます
看護師の労働市場そのものは、一つの施設の努力では変えられません。それでも、紹介会社への情報の渡し方と返信の速さは明日から変えられますし、求人票は今週中に書き直せます。応募ゼロの状態は、市場の問題と運用の問題を切り分けたところから動き始めます。
よくある質問
Q. 求人を出しても看護師の応募がゼロです。何から見直せばいいですか
最初に見直すべきは、契約している紹介会社の運用です。転職の意思が固まった看護師に最短で届くルートであり、追加費用もかからないからです。各社の直近の推薦数を棚卸しし、現場の情報を渡し直し、推薦に当日中に返信する体制を作ってください。求人票の改善はその次です。夜勤回数や配属先など、働いたあとの生活が分かる情報を足していきます。
Q. 契約中の紹介会社から推薦が来ません。別の会社に切り替えるべきですか
切り替えを考える前に、自院側の運用を確認してください。推薦が来ない原因の多くは、求人情報が薄い、返信が遅い、面接後のフィードバックがないといった、紹介会社から「決まりにくい施設」と見なされる対応にあります。ここを直すと、同じ契約のまま推薦が動き出すことが少なくありません。それでも動かない会社は整理し、動く会社に情報と関係を集中させるのが現実的です。
Q. 給与を上げないと、看護師は採用できませんか
給与だけの勝負ではありません。同じ条件でも、モデル月収や手当の内訳、夜勤の実態まで開示している求人票のほうが比較の土俵に残ります。書かれていない情報は「悪いから書いていない」と読まれやすいためです。相場から大きく外れているなら見直しも必要ですが、その前に、いまの条件が正しく伝わっているかを確認するほうが先です。
Q. ブランクのある看護師の応募を増やすには、どうすればいいですか
65歳未満で資格を持ちながら看護職に就いていない潜在看護職員は、平成30年末の推計で約69.5万人います。この層は求人媒体をこまめに見ていないため、待ちの募集では届きません。復職フォローの内容や夜勤なしの働き方を求人票と採用ページに明示したうえで、紹介会社にもブランク可の条件と受け入れ体制を具体的に伝えておくと、紹介と直接応募の両方で接点が増えます。
Q. 直接応募だけで採用できるようになりますか
直接応募を育てる方向は正しいのですが、時間がかかります。その間も欠員は待ってくれないので、紹介会社をやめることを目標にする必要はありません。転職顕在層に会える紹介ルートを運用最適化で動かしつつ、直接応募の受け皿を並走で整える。この2本立てが、応募ゼロから抜け出すいちばん現実的な道筋です。
看護師の応募ゼロ、紹介会社の運用から立て直しませんか
複数の紹介会社の運用最適化を軸に、求人票の改善から直接応募の受け皿づくりまで、御院の状況にあわせて人とAIで代行します。いまの紹介会社はそのまま、動く状態に変えるところから始めましょう。無料相談からお気軽にどうぞ。
無料相談はこちら