回復期リハビリテーション病棟やリハビリ科のある病院では、理学療法士の欠員を人材紹介会社で埋める場面が続いています。依頼先は、手数料の額を見比べて決めるのが通例です。

現場では「相場がわからないまま契約している」「募集をかけても言語聴覚士だけ決まらない」という声も聞かれます。金額だけで判断すると、配置が間に合わずリハビリの提供に影響しかねません。

理学療法士の採用コストは、支払う額ではなく、採用した人が積み上げる診療報酬から回収を見積もる順序が欠かせないでしょう。見積もりが、依頼の出し方を決めます。

本記事では、公的な集計に理学療法士の区分が無い事情から、PT・OT・STを分けて各社へ依頼し直す進め方まで解説します。

記事の一覧では、ほかのテーマも扱っています。


公的な集計に無い理学療法士という区分

採用にいくらかかるかを調べる時、最初に探すのは国の統計です。人材紹介の手数料も、厚生労働省が毎年の集計を公表しています。

ここでは、その集計から理学療法士の金額を読み取れない事情を解説します。

『職業紹介事業報告書の集計結果』は、職種ごとの求人・就職の件数と手数料をまとめた国の資料です。

医療分野の職種の区分は「医師」「看護師、准看護師」「医療技術者」までで、理学療法士だけを取り出した行はありません(厚生労働省の職業紹介事業報告書(令和6年度・速報))。

医療技術者という区分には、診療放射線技師や臨床検査技師なども入ります。ここに出てくる数字を理学療法士1人分の金額と見なすことはできません。

手がかりとして残るのは、病院団体が自ら実施した調査です。

リハビリ3職種の平均紹介手数料(病院回答)

職種採用1人あたりの平均手数料
理学療法士88.6万円
作業療法士89.5万円
言語聴覚士81.5万円

出典は全日本病院協会・日本医療法人協会・福祉医療機構『「病院の人材紹介手数料」に関するアンケート調査』(2020年10月公表)。2018年4月から2019年3月までに人材紹介会社を利用した病院からの回答を、職種ごとに単純平均した値。

理学療法士1人あたりの平均手数料は88.6万円でした(全日本病院協会・日本医療法人協会・福祉医療機構『「病院の人材紹介手数料」に関するアンケート調査』)。

この調査の公表は2020年で、以降に同じ規模の集計は出ていません。毎年更新される相場ではないため、金額を並べて依頼先を選ぶ材料はそろっていません。

判断の軸は、支払う額から回収できるかどうかへ移すことになります。

病院の廊下で歩行器を使って歩く高齢の患者に付き添い、歩行の様子を確認するリハビリ担当者
写真: Caleb Oquendo / Pexels

1単位20分から積み上がるリハビリの収入

リハビリテーションの診療報酬は、実施した分だけ算定する出来高です。採用した療法士の稼働が、そのまま病院の収入につながります。

ここでは、採用にかけた費用を回収の側から見積もる考え方を解説します。

疾患別リハビリテーション料は、20分以上の個別療法を1単位として算定します(厚生労働省『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』別添1(令和8年3月5日))。

たとえば脳血管疾患等リハビリテーション料(I)を届け出た病棟では、理学療法士が実施した1単位が245点になります(厚生労働省『診療報酬の算定方法の一部を改正する件』(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表)。

この留意事項の通知では、従事者1人が1日に実施する単位数の標準を18単位としています。1人の療法士が1日に積める量には、制度上の目安があります。

採用が決まった月から、その人の単位数が算定に乗ります。空席のままの月は、その人が積むはずだった単位が丸ごと立ちません。

手数料が重いかどうかは、配置までにかかった月数と、配置後に積み上がる単位数から見えてきます。同じ88.6万円でも、早く埋まった場合と空席が長引いた場合とでは、収支の意味が変わります。


「リハビリ職」でひとくくりにできない2つの事情

リハビリの求人は、「リハビリスタッフ募集」としてまとめて出される場合があります。一方で病棟の運営では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は別々に扱われます。

ここでは、職種を分けて考える必要がある2つの事情を解説します。

職種ごとに数える回復期リハビリテーション病棟の配置

回復期リハビリテーション病棟入院料1と2の施設基準では、専従の常勤理学療法士3名以上、作業療法士2名以上、言語聴覚士1名以上の配置が求められます(厚生労働省『基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて』(令和8年3月5日))。

人数は職種ごとに数えます。理学療法士が基準を上回っていても、言語聴覚士が1名足りなければ届出の要件は満たせません。

毎年生まれる人数の差

職種ごとの母数の違いは、国家試験の合格者数に表れます。

令和8年に実施された第61回理学療法士国家試験の合格者は11,156人でした(厚生労働省『第61回理学療法士国家試験及び第61回作業療法士国家試験の合格発表について』)。

同じ年に行われた第28回言語聴覚士国家試験の合格者は1,453人です(厚生労働省『第28回言語聴覚士国家試験の合格発表について』)。毎年新しく資格を得る人数には、1桁近い開きがあります。

3職種をまとめた1本の求人票で募集すると、母数の大きい職種から先に埋まります。言語聴覚士の空席だけが年度をまたいで残るのは、この差が影響しています。

回復期リハビリテーション病棟のスタッフステーションで、療法士と看護師が患者一覧の書類を挟んで担当の割り振りを相談する場面
写真: Gustavo Fring / Pexels

言語聴覚士の募集条件は、いま何社に届いているか

複数の紹介会社の運用最適化の観点で、リハビリ職の依頼を分けて書く項目をまとめました。職種ごとの必要人数の伝え方、配置時期の共有、条件が変わった際の各社への届け直しを、サービス概要資料に収めています。

無料で資料を受け取る

職種を分けて依頼を届ける2段の進め方

回収の見積もりと職種ごとの事情が整理できたら、次は紹介会社への依頼です。病院の側で手を入れられる余地は、ここに集まります。

ここでは、契約する会社の増やし方と、渡す依頼文の作り直しを解説します。

1. 依頼先の数で候補者の母数を広げる

人材紹介の多くは成果報酬型です。契約の締結そのものには費用がかからず、採用が決まった時点で手数料が発生します。

そのため、依頼先を事前に絞り込む理由は見当たりません。会社ごとに登録者の層は異なり、言語聴覚士を多く抱える会社もあれば、新卒の紹介に強い会社もあります。

1社にだけ依頼している状態では、その会社に該当者がいなければ推薦は届きません。社数が増えるほど、3職種それぞれに行き当たる機会が広がります。

適正な社数の見立ては契約社数の決め方にまとめています。ほかの職種の手数料の水準は職種別の手数料相場にまとめました。

養成校への求人票の送付やハローワークの求人は、紹介会社に依頼しながら並行して続けておく形で差し支えありません。

2. PT・OT・STを分けた依頼文の作り直し

社数を広げた次に手を入れるのは、各社へ渡す依頼文の中身です。「リハビリスタッフ募集」とだけ伝えると、担当者は職種を区別せずに候補者を探します。

分けて書く項目は、以下のとおりです。

  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のどれを何名求めるか
  • 配置したい時期と、施設基準の届出との関係
  • 回復期・急性期・外来など担当してもらう場面

3点目を添えると、紹介会社は候補者の経験と照らして声をかけられます。

依頼文は一度渡せば済むものではありません。病棟の再編や退職の予定が動いた時点で、契約している各社へ内容を届け直します。

契約が5社あると、条件が1つ変わるたびに5回の連絡が要ります。伝え漏れた会社では、以前の条件のまま候補者が探され続けます。

紹介会社の入れ替えを勧める話ではありません。いまの取引先は変えないまま、各社へ渡す条件と、更新の記録だけを整えます。

増やした契約を動かす段階が本丸です。ここが複数の紹介会社の運用最適化にあたります。

社数を増やす作業は一度で片づきます。条件を最新に保つ作業だけが、募集が続くあいだ残り続けます。

職種別の依頼文づくりと各社への展開は、一括エージェントが代わりに進めます。担当者とAIが分担し、条件が変わった際の連絡と、渡した内容の履歴管理まで受け持ちます。

支援に入った医療機関の例では、取引先を変えないまま届く紹介が支援前のおよそ2倍に増え、2か月のあいだに看護師2名の入職が決まりました。医療機関で得られた数値であり、リハビリ職の採用で同じ成果を約束できるものではありません。

複数社をまとめて扱う進め方は紹介会社を横断して動かす運用で解説しています。

病院の事務室でノートパソコンに向かい、紹介会社ごとの募集条件の一覧を画面で確認する事務長
写真: Mikhail Nilov / Pexels

まとめ|回収の見積もりから決めるリハビリ職の採用コスト

本記事では、公的な集計に理学療法士の区分が無い事情から、PT・OT・STを分けて契約各社へ依頼し直す進め方までを整理しました。

  • 理学療法士だけを取り出した公的な手数料の集計はなく、参照できるのは病院団体の調査に限られる
  • リハビリの収入は20分1単位の出来高で積み上がり、空席の期間はその分が立たない
  • 施設基準の数え方も毎年の合格者数も職種ごとに違うため、3職種を分けて契約各社へ渡す

職種別の依頼文を一度作る作業は、それほど時間がかかりません。手間が積み上がるのは、契約する各社に同じ内容を行き渡らせ、条件が動くたびに直していく段階です。

リハビリ科の管理者は、自身も患者を担当しながら部門の運営に当たることが少なくありません。各社への連絡は、その日の予定を終えた後に回されがちです。

この行き来を、一括エージェントが肩代わりします。付き合う会社の顔ぶれはそのままに、依頼文の書き分けと配信の作業だけを外に出せます。

いま契約各社へ渡っている募集条件を並べて確かめるところから、支援に入っています。

よくある質問

Q. 理学療法士の採用コストは、公的な統計で確認できますか

理学療法士だけを取り出した公的な集計はありません。厚生労働省が公表する職業紹介事業報告書の集計では、医療分野の区分が「医療技術者」までで、ほかの医療技術職と合わせた数字になっています。金額の手がかりは、全日本病院協会などが2020年に公表した病院向けの調査で、理学療法士の平均手数料は88.6万円でした。ただし2018年度の実績で、毎年更新される相場ではありません。金額の比較より、配置までの期間と配置後の算定から回収を見積もるほうが判断の材料になります。

Q. 作業療法士と言語聴覚士は、理学療法士と同じ条件で募集してよいですか

分けて出すほうが実際に届きます。毎年新しく資格を得る人数は職種ごとに大きく違い、第61回の国家試験では理学療法士の合格者が11,156人、同じ年の言語聴覚士は1,453人でした。3職種をまとめた求人票を渡すと、紹介会社は登録者の多い職種から候補者を探します。回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準も、職種ごとに人数を数えます。職種名と必要人数、配置したい時期を書き分けて渡すと、各社が探す対象が変わります。

Q. 採用コストを抑えるために、依頼する紹介会社は絞ったほうがよいですか

絞る必要はありません。人材紹介の多くは成果報酬型です。契約の締結だけでは費用が生じないため、社数を減らしても支出は変わらないまま、出会える候補者の幅だけが狭くなります。紹介会社との取引をやめる方向ではなく、いまの契約を動かす運用の見直しが現実的です。実際に単価と期間に効いてくるのは、各社へ渡す募集条件をそろえること、推薦や連絡への返信を滞らせないこと、どの会社から誰が届いたかを記録しておくことの3つです。この運用を整えた後であれば、会社ごとの違いも見分けられます。


リハビリ職の依頼内容を、各社にそろえられているか

無料相談では、契約している紹介会社の数と、各社へ渡している募集条件をうかがいます。職種の内訳が伝わっていない会社と、更新が止まっている項目を洗い出し、着手する順番をその場で整理します。

無料相談はこちら