複数の店舗を構える薬局法人で、薬剤師の欠員を人材紹介会社で埋める動きが広がっています。採用を決めるのは各店舗の現場で、紹介会社への依頼も店舗の単位で立ち上がります。

本部では「1人採るだけでこの負担になるのかと役員に示しづらい」「どの店舗がどこへ頼んでいるのか追えていない」という声が挙がります。依頼の入口が店舗ごとに分かれたままでは、同じ紹介会社へ条件の違う発注が重なり、年間でいくら払うのかの見通しを失いかねません。料率の交渉より先に、依頼の入口を本部へ束ねる整理が欠かせないでしょう。

本記事では、薬剤師の採用コストが読めなくなる理由から、依頼の入口を本部に集めて年間の支払総額を動かす手順まで解説します。

薬局以外の職種の採用費用については記事一覧から読めます。


薬剤師の採用コストが読めなくなる発注の散らばり

薬剤師1人あたりの請求額は、契約書の料率と入社した人の理論年収で決まります。ところが法人全体でいくら払っているかを聞かれると、すぐに答えられない薬局が少なくありません。

ここでは、金額が見えなくなる原因と、本部が最初に手をつける1つの作業を解説します。

原因は料率の高さではなく、依頼の入口が店舗ごとに分かれていることにあります。各店舗が自分の判断で紹介会社に連絡し、条件も決め方もそれぞれ違う状態では、請求書が届くまで金額の全体像が現れません。

薬局はもともと店舗の数が多く、意思決定が分散しやすい業態です。厚生労働省が中央社会保険医療協議会へ示した資料では、同一法人で20店舗以上を運営する法人に属する薬局が49.9%を占めます(令和6年度・n=60,015。20〜299店舗と300店舗以上の合計。調剤について(その1)(厚生労働省・中医協 総-2、令和7年9月10日))。

半数の薬局が、20店舗以上の法人の一部として動いている計算です。本部と店舗のあいだで採用の権限が曖昧なまま、紹介会社との接点だけが店舗の数だけ増えていきます。

そこで最初に着手するのは、直近1年に紹介会社経由で入社した薬剤師と、その支払額を本部の1枚にまとめる作業です。店舗別の紙をそろえるのではなく、法人全体の合計と会社ごとの内訳が1枚で読める形にします。

薬品が並ぶ棚の前で薬のラベルを確認する薬剤師の様子
写真: World Sikh Organization of Canada / Pexels

病院を対象にした調査では薬剤師の紹介手数料の平均が115.3万円と報告されていますが、これは2018年度に病院から回答を集めた単純平均で、調剤薬局にそのまま当てはまる金額ではありません(病院の人材紹介手数料に関するアンケート調査。全日本病院協会ほか3団体が2020年に公表)。

自社の水準は、契約書の料率と実際の入社者の年収から自前で出すほうが確かです。料率そのものの水準や上限をめぐる論点は紹介手数料の相場と上限の考え方にまとめているため、本記事は支払総額の側に話を絞ります。


支払総額が動く薬剤師採用の3つの事情

同じ料率でも、法人としての支払総額は運用によって変わります。薬剤師の採用には、その差を生む職種固有の事情があります。

ここでは、窓口が分散した時に金額が膨らむ3つの事情を解説します。

1つ目は、店舗の人員が薄いことです。国の委託調査では、1店舗で1日あたりに勤務する薬剤師は平均2.7人でした(令和3年度厚生労働省保険局医療課委託調査「薬局の機能に係る実態調査」。前掲の中医協資料)。

薬局には実地に管理する薬剤師を置く義務があり、その薬剤師は原則として別の店舗の実務を兼ねられません(医薬品医療機器等法第7条)。

1名の欠員が開局時間や調剤の体制にそのまま響くため、店舗は金額を確かめる前に決めざるを得ません。急ぎの判断が続けば、条件は上がる方向にそろっていきます。

2つ目は、同じ紹介会社に複数の窓口が生まれることです。店舗が個別に連絡し、本部も並行して依頼していると、1つの紹介会社が同じ法人から違う条件の求人を受け取ります。

紹介会社の側では、どちらの条件で推薦するかの判断が必要になります。結果として、決まりやすい条件のほうへ推薦が寄り、法人としては高いほうの条件で採用が積み上がります。

デスクに広げた資料とグラフを複数人で突き合わせている様子
写真: Pavel Danilyuk / Pexels

3つ目は、薬剤師の数が地域でそろっていないことです。薬局・医療施設に従事する薬剤師の人口10万対の人数は、最も多い県と最も少ない県で約1.7倍の開きがあります(令和6年12月31日現在。徳島県256.6と沖縄県155.3から算出。厚生労働省『令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』)。

同じ法人でも、都市部の店舗は決まりやすく、地方や郊外の店舗は時間がかかります。店舗ごとに交渉していると、決まりにくい店舗だけが条件を引き上げ、法人としての基準が崩れます。


依頼の入口を本部へ束ねる3つの手順

窓口を束ねるとは、店舗の採用権限を引き上げることではありません。紹介会社と話す入口を1本にして、条件を法人の基準でそろえる作業です。

ここでは、本部が1〜2か月で実行できる3つの手順を解説します。

手順は以下のとおりです。

  • どの店舗がどの紹介会社と、どの料率で契約しているかを1枚に並べる
  • 紹介会社への依頼と推薦の受け取りを本部の1か所に集め、店舗は欠員の発生と希望する勤務条件だけを本部へ上げる
  • 1社につき法人で1つの条件に統一し、地域差は募集の優先順位で調整する

1つ目の棚卸しは、契約書と請求書を集めるだけで進みます。同じ紹介会社と店舗別に条件の違う契約が残っている状態が見つかることも珍しくありません。

2つ目を進めると、推薦の宛先が本部に集まります。どの店舗の求人にどれだけ推薦が来ているかが並んで見え、条件を引き上げる前に打てる手があるかを判断できます。

3つ目では、地域差を料率や年収で吸収しません。採れにくい店舗の求人を優先して各社に出す、面接の枠を先に確保する、といった順番の調整で埋めていきます。

念のため補足すると、これはいまの紹介会社をやめる話でも、契約を入れ替える話でもありません。契約はそのまま使いながら、依頼の入口と条件の決め方だけを変える進め方です。

窓口を束ねる時に注意したいのは、店舗の動きを止めてしまうことです。本部に上げてから返事が来るまでに数日かかる運用にすると、欠員が埋まる速さが落ちます。推薦への返答は当日か翌日までに返す前提で、本部側の担当と代理の担当を決めておく姿勢が重要です。

契約の数を押さえてから運用へ手を入れる順番

窓口を束ねた後に迷いやすいのが、紹介会社の数をどうするかです。順番を取り違えると、採用の速さが落ちます。

ここでは、契約の数を確保する段と、運用へ手を入れる段に分けて解説します。

成果報酬の契約は数を先に確保する

人材紹介は成果報酬の契約が主流で、結んだだけでは費用がかかりません。求人を預けている間の負担もなく、請求は入社が決まってから届きます。

そのため、契約の数を絞る動機は金銭の面からは出てきません。薬剤師のように地域で採れ方が変わる職種では、預け先が多いほうが地方の店舗まで推薦が届きます。

上限になるのは、本部が返答を返しきれる推薦の件数です。考え方は人材紹介会社は何社と契約すべきかで扱っています。

薬剤師の採用、法人全体の紹介手数料を把握できていますか

複数の紹介会社の運用最適化を軸に、店舗ごとに散った依頼を本部へ束ねる手順と、年間の支払総額の出し方をまとめました。サービス概要資料を無料でお送りします。

無料で資料を受け取る

本部から紹介を動かす運用の最適化

ここが本丸です。契約の数がそろっても、各社の動きを本部が見ていない状態では、年間の支払総額は下がりません。

各社から届いた推薦の件数と、選考がどこまで進んだかを1つの表に並べます。動きの鈍い会社が見えたら、求人票の情報を足すか、返答までの時間を詰めます。

この一連の作業を、複数の紹介会社の運用最適化と呼びます。束ねて動かす全体像は複数社を束ねるエージェントコントロール、日々の管理の手順は複数の人材紹介会社を管理する方法で扱っています。

薬局の求人票では、担当者に伝える情報の量で推薦の中身が変わります。1日の処方箋の枚数、在宅への訪問の有無、管理薬剤師を任せる予定か否か、店舗間の異動の範囲まで書き添えておく必要があります。

こうした手間を人とAIで肩代わりするのが、一括エージェントの運用代行です。各社との連絡や推薦の記録はAIがまとめ、求人票の調整と推薦への返答、条件の交渉は人が行います。

当社が運用を引き受けた医療機関の例では、2ヶ月のうちに看護師2名の採用へつながり、各社からの紹介は約2倍に増えました。

ハローワークや職員からの声かけも、並行して進められます。ただし、退職の意思を固めた薬剤師に短い期間で出会える窓口は紹介会社の側にあり、こうした無料の入口は本部の運用に並走させる補助として置くのが現実的です。

明るい会議室で向かい合って面談をしている担当者と候補者の様子
写真: Sora Shimazaki / Pexels

まとめ|紹介運用を束ねて薬剤師の採用コストを最適化する

本記事では、薬剤師の採用コストが読めなくなる理由から、依頼の入口を本部へ束ねる手順までを整理しました。要点は次の3つです。

  • 支払総額が読めない原因は料率ではなく、店舗ごとに分かれた依頼の入口にある
  • 20店舗以上の法人に属する薬局は49.9%で、同じ紹介会社に複数の窓口が生まれやすい
  • 順番は契約の数の確保が先で、本部から各社を動かす運用の最適化が本丸

年間の支払総額は、1社ずつ料率を削るよりも、依頼の入口を1本にして条件をそろえるほうが動きます。契約と請求書を1枚に並べるところから始められます。

ただ、店舗から上がる欠員の連絡を受け、会社ごとに求人票を書き分け、届いた推薦へ当日のうちに返答する作業は、店舗運営を見ながら進める本部には荷が重くなります。

この部分を外へ出す選択肢が、一括エージェントの運用代行です。取引している会社はそのまま残し、各社との連絡と記録、求人票の調整だけを預ける形になります。

店舗の数が増えても支払総額が読める状態には、依頼の入口をそろえるところから近づいていきます。

よくある質問

Q. 薬剤師1人あたりの採用コストは、どう見積もればよいですか

採用したい枠の想定年収に、契約書の料率をかけて計算します。公的な統計に薬局を対象とした手数料の平均額は置かれておらず、他社の相場から逆算しても自社の金額には近づきません。あわせて、直近1年に紹介会社経由で入社した薬剤師の人数と支払額の合計を本部で出しておくと、1人あたりの水準と法人全体の負担が同時に見えます。

Q. 店舗ごとに別々の紹介会社と契約していますが、契約は結び直すべきですか

結び直す必要はありません。変えるのは契約ではなく、依頼の入口と条件の決め方です。既存の契約を残したまま、紹介会社への依頼と推薦の受け取りを本部の1か所に集め、1社につき法人で1つの条件に統一します。

Q. 薬剤師の採用では、紹介会社の数を絞ったほうがよいですか

絞る必要はありません。成果報酬の契約は結んでいる間の費用がかからず、数を持つこと自体が負担にはならないためです。薬剤師は地域によって採れ方が変わるため、預け先を減らすと地方や郊外の店舗への推薦が細ります。見直したいのは数ではなく、店舗と本部の双方から同じ会社へ違う条件で依頼が飛んでいる状態です。入口をそろえて各社を動かすほうが、契約の整理よりも年間の支払額を動かせます。


薬剤師の採用、店舗ごとに散った紹介の窓口を束ねませんか

店舗別の契約と料率の棚卸しから、本部への依頼の一本化、求人票の書き分けと推薦の追跡まで、人とAIでまとめて引き受けます。いまの紹介会社は入れ替えません。無料相談では、契約中の会社と直近1年の紹介手数料の合計をうかがったうえで、進め方をご提案します。

無料相談はこちら