推薦の数に満足できないとき、採用担当者が最初に手をつけるのが人材紹介会社の契約社数です。

判断の材料になりやすいのは他社の平均社数ですが、相場に合わせて増やした社数は、そのまま推薦の増加にはつながりません。契約先が増えるほど1社あたりに渡せる情報と返信は薄まり、どの会社からも後回しにされる状態に近づきかねません。社数の上限を決めるのは市場の相場ではなく、自社が推薦に返信し切れる件数でしょう。

この記事では、発注側の企業が実際に何社と契約しているかを調査データで確認したうえで、自社の対応量から契約社数を逆算する考え方を解説します。

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契約社数の実態|平均8.0社という現在地

はじめに、発注側の企業が実際に何社を抱えているかを数字で確認します。

63社の採用担当者を対象とした調査では、契約している人材紹介会社の社数は全体平均8.0社でした。採用目標人数別に見ると、1〜10名で4.7社、11〜20名で6.8社、21〜50名で12.0社と、採りたい人数に応じて社数が積み上がっています(2022年6月・インターネットによる調査・有効回答63社。株式会社アールナイン『63社の採用担当者に聞いた!中途採用に関する実態調査』)。

同じ会社が4か月前に実施した別の調査では、人材紹介会社の平均利用社数は4.5社、2社以上を利用している企業が81.6%でした(2022年2月・インターネットによる調査・有効回答72社。株式会社アールナイン『72社の採用担当者に聞いた!母集団形成に関する実態調査-中途編-』)。

いずれも採用支援会社が自社で実施した調査で、回答数は63社と72社です。公的統計ではないため、水準の目安として読む範囲にとどめます。

2つの調査は標本も設問も別のため、増減として並べることはできません。読み取れるのは、平均が4.5社と8.0社という幅のなかにあり、どちらの調査でも複数社との契約が当たり前になっているという水準です。

オフィスのデスクで採用担当者がノートパソコンの画面を見ながら書類を確認している様子
写真: Mikhail Nilov / Pexels

ただし、これは「何社と契約したか」の平均であって、「何社が実際に動いたか」の平均ではありません。増やした社数が推薦に変わったかどうかは、どちらの調査も測っていません。

「何社が普通か」という相場は、社数を決める根拠になりません。決め手になるのは、契約した社数を自社が受け止められるかどうかです。


増やした社数が推薦に変わらない仕組み

社数を足しても推薦が増えないのは、紹介会社の側に求人を選ぶ順番があるためです。

紹介会社の担当者は、同時に複数の求人を抱えています。登録者を1人推薦するとき、どの求人に当てるかは担当者の判断で決まります。

判断の材料は、返信がどれだけ速く返ってくるか、求人の背景をどこまで具体的に聞けているか、見送りの理由が共有されているかです。手応えのある求人に候補者が回り、反応の鈍い求人は後ろへ下がります。

つまり発注側の企業は、契約した時点で紹介会社の中の順位表に載ります。社数を増やせば、順位を上げにいく相手が何社にも増えます。

契約社数は手続きだけで増やせますが、返信できる件数は増えません。増やした社数のぶんだけ、1社あたりの対応が薄くなります。

そして対応する側の人数は、社数に合わせては増えません。先ほどの調査では、採用担当者1人あたりの採用目標人数は平均6.9人でした(株式会社アールナイン『中途採用に関する実態調査』)。

1人の担当者が7人前後の採用を並行して抱えている状態に、8社ぶんの窓口が乗ります。推薦への返信が翌日以降にずれ込めば、8社すべての順位表で位置が下がります。

社数を増やしたのにどこからも推薦が来ない、という状態はこの経路で起こります。対応の側から原因を整理したものは推薦が止まるときに起きていることで扱っています。

オフィスで会社員が電話を耳に当てながらメモを取り、机の上に書類が積まれている様子
写真: Vlada Karpovich / Pexels

返信し切れる件数からの逆算

適正な社数は、自社が1か月に処理できる推薦の件数から決まります。確かめる軸は3つです。

  • 推薦1件に当日中の一次回答を返せる件数
  • 1社を動かし続けるために渡す情報の量
  • 契約先どうしの職種とエリアの重なり

1つ目が上限を決めます。推薦が届いてから書類を確認し、可否を返すまでにかかる時間を実測します。1件20分で、採用対応に1日1時間を割ける担当者なら、1日3件、月20営業日でおよそ60件が処理できる量です。

次に、直近3か月に各社から届いた推薦の件数を社ごとに数えます。1社あたり月10件が届いているなら、60件を10で割った6社が、返信の滞らない範囲になります。

数字は自社の実測値に置き換えます。ここで見るのは他社の平均社数ではなく、自社の分母です。

担当者が複数いる場合も、上限は人数の掛け算では伸びません。先に触れた1人あたり6.9人という採用目標を負ったまま、紹介会社の窓口が上乗せされるためです。

そのうえ採用目標が複数の職種にまたがると、処理できる件数は職種ごとに割り振ることになります。募集が3職種に分かれていれば、1職種に回せるのは上限の3分の1です。

そのため、社数を数える前に職種ごとの分母を出しておきます。全社合計で60件を処理できても、1職種に割ける枠が20件なら、その職種で持てるのは2社前後になります。

2つ目は、社数を維持するための手間です。紹介会社は求人の背景を理解できた順に候補者を当てるため、要件のすり合わせ、求人票の更新、見送り理由の返却まで発生します。

推薦への返信だけでは終わりません。この手間を割り振る人数がいなければ、社数の上限は計算値よりさらに下がります。

3つ目は重なりです。同じ職種、同じエリアに強い会社を並べると登録者の層が重複し、1人の候補者が複数の会社から推薦されます。

重なりが大きいほど、足した社数は母集団の広がりに変わりません。逆に、職種が分かれていて求人が競合しないなら、社数を増やす余地があります。

目安のレンジも示しておきます。先の調査で採用目標人数が1〜10名の企業の平均は4.7社でした。担当者が他の業務と兼任している少人数採用なら、実務が回る範囲はこの前後に収まります。

専任の担当者がいて記録の仕組みもある場合は、これより上を持てます。正解の社数が決まっているわけではなく、分母が変われば適正値も動きます。

社数を決めることと、決めた社数が動くことは別です。

社数を決めたあと、動かす運用まで手が回っていますか

複数の紹介会社の運用最適化を軸に、契約社数の決め方と、決めた社数を動かすまでの流れをまとめました。返信の分母の測り方、各社に渡す情報のそろえ方、稼働の記録の付け方まで、サービス概要資料に整理しています。

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決めた社数を動かす運用の順番

社数を決めたら、次はその社数を動かす番です。最優先で手をつけるのは、すでに契約が済んでいる紹介会社の運用を整える作業でしょう。新しい会社の開拓は、既存の枠が動きはじめてからで間に合います。

紹介会社を置き換える話ではありません。契約はそのままにして、情報の渡し方と返信の速さだけを改めます。

やることは2つに絞れます。1つは各社に渡す情報の水準をそろえること、もう1つは社ごとの推薦数と選考の進み方を記録に残すことです。記録が残れば、次に社数を見直すときの分母が実測値になります。

進め方の詳細は複数社の管理を立て直す手順にまとめました。

複数社を横断で運用する枠組みを押さえたい場合の入口はエージェントコントロール入門です。

会議室で2人のビジネスパーソンが資料を広げて打ち合わせをしている様子
写真: Kampus Production / Pexels

ただし、この運用にかかる工数は社数に比例します。決めた社数が5社でも、当日の返信と情報提供と記録が毎週発生します。他の業務と兼任している担当者なら、決めた翌月には運用が細りはじめます。

ここを人とAIで受け持つのが一括エージェントです。各社の窓口を引き取り、推薦への一次回答、求人票の作り直し、稼働状況の記録までをまとめて運用します。

医療機関の例では、契約先を変えないまま運用だけを移した結果、紹介数がおよそ2倍に増え、2ヶ月で看護師を2名採用しています(導入の経緯をまとめた記事)。


まとめ|社数は相場ではなく処理量で決める

この記事では、人材紹介の契約社数を決める基準を、他社の相場ではなく自社の処理量から組み立て直す方法として整理しました。

調査では契約社数の平均が8.0社という水準にありますが、社数と推薦数は比例しません。紹介会社の中では求人に順位がつき、返信が遅れた企業から位置が下がるためです。上限を決めるのは、推薦に当日返せる件数と、1社に渡す情報を保てる余力です。

とはいえ、返信の分母を測ることも、各社への情報提供をそろえることも、他の業務を抱えたままでは続きません。社数を正しく決めても、運用が細れば結果は同じ場所に戻ります。

日々のやり取りと記録を外に預ける先として、一括エージェントという選択肢があります。契約先は変えないまま、社数を決める側の分母を引き上げる形です。

よくある質問

Q. 推薦が来ない紹介会社との契約は、解約したほうがよいですか

解約を急ぐ必要はありません。推薦が届かない理由は、紹介会社の姿勢よりも、自社から渡している情報と返信の速さにあることが大半です。同じ状態のまま契約先を入れ替えても、新しい会社で同じ位置に落ち着きます。まずは求人の背景と見送り理由を渡し直し、一次回答の期限を決めて3か月ほど様子を見ます。それでも動かない会社が残るなら、そのときに整理すれば十分でしょう。契約を減らす判断より、いまの契約から成果を引き出す運用のほうが、手戻りが少なく済みます。

Q. 紹介会社1社だけの契約でも問題ありませんか

職種と採用人数によります。1社の登録者だけを見ることになるため、要件を絞った職種では候補者の母数が足りなくなります。一方、担当者が兼任で、いま届いている推薦にすら返し切れていないなら、社数を足しても処理できる量は変わりません。順番としては、まず1社への返信と情報提供を最後まで回せているかを確かめます。回せていて、それでも候補者の層が薄いと感じたときが、2社目を足す時期です。

Q. 新しい紹介会社を追加する目安はありますか

直近3か月の推薦数を社ごとに数え、処理の余力が残っているかで判断します。すべての社に当日中の一次回答が返せていて、なお推薦の総数が採用計画に届いていないなら、追加する余地があります。逆に、返信が翌日以降にずれている社が1つでもあるなら、追加より先に既存の運用を戻すほうが早く効きます。追加する場合も、いまの契約先と職種やエリアの得意分野が重ならない会社を選ぶと、母集団の広がりにつながります。


契約社数を決める前に、いまの分母を確かめる

無料相談では、契約中の紹介会社の一覧と直近の推薦状況を拝見し、いまの体制で無理なく回せる社数と、増やす前に整えておく項目を整理してお伝えします。採用計画の規模に合わせて、社数の決め方からご相談ください。

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