自社の採用サイトやスカウトと人材紹介を併用していると、同じ候補者が別々の経路から現れることがあります。

この時、「直接応募で来たのだから手数料はかからないはずだ」「どこまで過去の推薦をさかのぼるべきか分からない」といった状態で止まりがちです。応募の入り口だけで判断すると、契約上は対象だった候補者を無償と扱い、後から請求を受けかねません。手数料の対象かどうかは、応募の経路ではなく、その候補者に有効期間内の推薦履歴があるかで確かめるほうが確実でしょう。

本記事では、手数料の対象になる3つの条件から、応募受付時に推薦履歴を照合する手順までを解説します。

ほかのテーマは記事の一覧にまとめています。


紹介手数料の対象になるかを決める3つの条件

手数料を支払う義務が生じるかどうかは、応募の経路そのものでは決まりません。法令の枠組み、各社と結んだ契約、候補者ごとの推薦の記録という3つの層で決まります。

ここでは、その3つを順に解説します。

法令が手数料の対象とする「職業紹介」の範囲

職業安定法は、職業紹介を「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」と定義しています(職業安定法第4条第1項)。

この「あっせん」について、厚生労働省の業務運営要領は「求人者と求職者との間をとりもって雇用関係の成立が円滑に行われるように第三者として世話すること」と説明しています(職業紹介事業の業務運営要領 第1・厚生労働省)。

手数料の規定も、この職業紹介を前提としています。有料職業紹介事業者は「職業紹介に関し」、定められた場合を除いていかなる名義でも手数料や報酬を受けてはなりません(職業安定法第32条の3)。

届出制を選んでいる場合、請求される額の根拠になるのは、各社があらかじめ厚生労働大臣へ届け出た手数料表です。徴収できるのは、この表に定めた額に限られます。

法令が定めているのは、紹介会社が手数料を徴収できる範囲と手続です。条文は、手数料を「職業紹介に関し」徴収するものとして限定しています。

個々の採用が対象に入るかどうかは、その範囲のなかで各社が定めた手数料表と、求人企業との契約の内容で決まります。

契約が定める手数料の対象期間

2つ目の条件は、各社と結んだ基本契約です。推薦を受けた日から何か月以内の入社を手数料の対象とするか、その範囲は条項で決まります。

期間の長さや、どの時点を起算日とするかは会社ごとに異なります。

条項の読み方は契約書で見るべき条項で解説しています。

契約書とは別に、手数料の金額と発生条件は紹介会社から明示を受ける事項でもあります。有料職業紹介事業者には、手数料に関する事項などを求人者と求職者へ明示する義務があります(職業安定法第32条の13)。

業務運営要領によれば、手数料表を示すだけでは金額や発生条件が明らかにならない場合、遅くとも個々の職業紹介の実施までに、誤解が生じないよう明示する必要があります(職業紹介事業の業務運営要領 第6 手数料・厚生労働省)。

そのため、重複した時に手数料が発生するかどうかを判断する材料は、契約書と明示を受けた書面の形で企業側にわたっています。

有効期間内の推薦履歴の有無

3つ目は、その候補者について推薦の記録が残っているかどうかです。

同じ人物が過去にその紹介会社から推薦されており、契約に定めた期間がまだ切れていない場合、応募の経路が自社サイトであっても対象に含まれることがあります。

推薦を受けた事実がない候補者であれば、紹介会社のあっせんを経ずに成立した採用です。この場合、法令上の職業紹介にあたる行為が存在しません。

見るべきなのは、応募フォームに記録された経路ではなく、推薦履歴と契約期間の突き合わせです。

オフィスの机で応募者一覧の書類と紹介会社からの推薦メールの画面を並べて見比べている採用担当者
写真: Kampus Production / Pexels

「直接応募だから無料」と判断できない場面

重複は、採用担当者が意図しない形で生まれます。併用しているチャネルが多いほど、同じ人物が複数の経路から現れる可能性は上がります。

ここでは、実務で起きやすい3つの場面を解説します。

  • 紹介会社の担当者から求人を聞いた候補者が、自社の採用サイトから応募する
  • 過去に別の職種で推薦された候補者が、今回は直接応募で応募してくる
  • スカウトを送った相手が、同じ時期に紹介会社にも登録している

いずれの場合も、候補者の側に何らかの意図があるとは限りません。求人を知った経路と、応募に使った経路が一致しないだけです。

求職者は複数の手段を並行して使います。紹介会社に登録したまま、企業の採用サイトやスカウトの通知を見ている人は珍しくありません。

応募フォームの「応募のきっかけ」欄は自己申告です。候補者が以前受けた推薦と今回の応募を結びつけて記入するとは限らず、応募時点の情報だけでは推薦履歴の有無まで分かりません。


推薦履歴を照合する社内の手順

重複の判断は、応募を受け付けた時点で行います。選考が進んでから判明すると、内定を出す直前に契約の解釈をすり合わせることになります。

ここでは、応募受付から確認までの手順を解説します。

応募受付時に突き合わせる項目

照合に使うのは、氏名の読み、生年月日、直近の勤務先の3点です。表記のゆれで一致を見落とさないよう、複数の項目で確かめます。

突き合わせる先は、紹介会社から届いた推薦の記録です。推薦を受けた日、推薦した会社名、対象の職種の3項目を残しておくと、期間の判定まで一度で終わります。

推薦の記録が各社からのメールに散らばっている状態では、この照合が成立しません。過去の推薦を検索できる形にまとめておく作業が、手順の前提になります。

該当した場合に確認する順序

記録に一致があった場合の確認は、以下の順で進めます。

  • 推薦を受けた日と、その会社との契約に定めた対象期間を照らす
  • 期間内であれば、社内の選考は止めずに紹介会社へ事実を伝える
  • 期間外であれば、判断の根拠を記録に残して通常の選考として進める

確認は紹介会社との間で行い、候補者へ応募の経路を問い直す進め方は取りません。契約上の扱いは企業と紹介会社の間の問題であり、候補者の評価とは切り離して扱う姿勢が欠かせないでしょう。

期間内と判断した場合でも、選考の進め方が変わるわけではありません。変わるのは、入社が決まった時に手数料の対象として処理するかどうかです。

記録を残す範囲

照合の結果は、対象と判断した場合も対象外と判断した場合も残します。推薦を受けていないという事実は、記録がなければ後から示せないためです。

判断の根拠になった推薦日と、参照した契約の条項を書き添えておくと、後から請求を受けた際に同じ資料で説明できます。

なお、複数の紹介会社から同じ候補者の推薦が届いた場合の扱いは、別の論点になります。紹介会社どうしの重複については紹介会社間で推薦が重なった時の対応で整理しています。

ノートパソコンで応募者管理の一覧表を開き、推薦日の欄を指差しながら同僚と確認している2人の担当者
写真: Mikhail Nilov / Pexels

複数の紹介会社からの推薦を、1本の記録にまとめる

複数の紹介会社の運用最適化を前提に、各社から届いた推薦の記録の残し方をまとめました。誰の推薦がいつどの会社から届いたかを追える形式から、直接応募との照合に必要な項目まで、サービス概要資料で確認できます。

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併用を続けたまま重複に備える運用

重複を避けるために、紹介会社との契約を減らす必要はありません。人材紹介は成果報酬型が主流で、契約を維持しているだけでは費用が発生しないためです。

ここでは、契約を維持したまま重複に備える運用を解説します。

契約社数をどこまで増やすかの目安は何社と契約するかの目安で整理しています。

備えとして先に手をつけたいのは、応募と推薦の受け口を1か所にまとめる作業です。採用サイトからの応募、スカウトへの返信、各紹介会社からの推薦が別々の担当者やメールボックスに届いている状態では、照合そのものが始められません。

受け口をそろえたうえで、各社との契約に定めた対象期間を一覧にしておきます。会社ごとに期間が違っていても、一覧があれば応募のたびに契約書を開き直す手間はなくなります。

契約中の各社を並べて見比べ、どこにどれだけ力を入れるかを決めていく運用が、エージェントコントロールです。全体像はエージェントコントロールの全体像で解説しています。

紹介会社を減らしたり入れ替えたりする話ではありません。いま契約している各社をそのまま使いながら、応募と推薦の記録だけを1本にまとめます。

ただし、複数の会社から届く推薦を1件ずつ記録し、応募のたびに照合し続ける作業は、他の業務と兼任している体制では滞ります。契約先が増えるほど、記録の量も比例して増えます。

一括エージェントは、この管理を人とAIで代行します。各社への求人情報の提供、届いた推薦へのその日のうちの一次回答、どの会社からいつ誰の推薦が届いたかの記録までを引き受けます。

一括エージェントが支援した医療機関の例では、契約先を1社も変えないまま、紹介数が支援前の約2倍になりました。看護師2名の採用が決まるまでの期間は2ヶ月です。

ホワイトボードに採用チャネルごとの応募の流れを書き出しながら打ち合わせをしている3人の社員
写真: Thirdman / Pexels

まとめ|入り口ではなく、推薦履歴で判断する

本記事では、直接応募と紹介が重複した時に手数料の対象となる条件と、応募受付時に照合する手順を整理しました。

法令が定めているのは、紹介会社が手数料を徴収できる範囲と手続です。個々の採用が対象に入るかどうかは、各社の手数料表と契約の定め、そしてその候補者に有効期間内の推薦履歴があるかで決まります。応募フォームに記録された経路は、判断の材料になりません。

照合を続けるには、各社からの推薦を1件ずつ記録し、応募のたびに突き合わせる運用が要ります。契約先が増えるほど、この作業は積み上がります。

一括エージェントは、複数の紹介会社の運用最適化を人とAIで代行するサービスです。契約関係には手をつけず、各社とのやり取りと推薦の記録を引き受けます。直接応募との重複に備えた記録の残し方から相談したい企業は、ぜひ一度ご相談ください。

よくある質問

Q. 直接応募を増やせば、紹介会社との契約は減らせますか

減らす必要はありません。人材紹介は成果報酬型が主流で、契約を維持しているだけでは費用が発生しないためです。直接応募は紹介と並行して動かすチャネルであり、どちらか一方に寄せる判断は、接触できる候補者の幅を狭めます。現実的なのは、契約を維持したまま応募と推薦の記録をそろえ、重複を判断できる状態をつくる進め方でしょう。

Q. 推薦を受けたものの選考に進まなかった候補者が、後日直接応募してきた場合はどうなりますか

選考に進んだかどうかではなく、推薦を受けた日から契約に定めた期間が過ぎているかで判断します。期間内であれば対象に含まれることがあります。期間の長さと起算日は会社ごとに異なるため、該当する契約の条項を確認したうえで、紹介会社と扱いをすり合わせます。

Q. 紹介会社から「その候補者は当社の登録者だ」と連絡を受けました。何を確認すればよいですか

登録の有無ではなく、自社の求人に対する推薦の事実を確認します。職業安定法上の職業紹介は、求人と求職の申込みを受けて雇用関係の成立をあっせんすることを指すためです。確かめたいのは、その候補者について推薦を受けた日と、その時点の契約内容の2点です。社内の記録に該当がない場合は、推薦した日時と方法の提示を求めます。


直接応募との重複に、迷わず対応できる体制へ

無料相談では、いま契約している紹介会社とのやり取りの状況を伺い、推薦の記録と応募の受付をそろえるために先に着手すべき点を整理してお伝えします。すでに重複が起きている段階のご相談もお受けしています。

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