在宅で療養する人が増え、訪問看護ステーションは令和7年4月1日時点で18,754事業所まで広がりました。その一方で、看護職員の確保が追いつかない事業所は少なくありません。
人が足りないとわかると、求人媒体を増やす、募集要項を書き直すといった募集量の対策に向かいがちです。ただし訪問看護は看護職員5人未満の事業所が45.0%を占めており、募集を広げている間に、訪問件数とオンコール体制のほうが先に限界を迎えます。問われているのは募集の量ではなく、欠員が埋まるまでの速さでしょう。
この記事では、小規模ゆえに欠員1人が重くなる構造を公的データで整理したうえで、いま契約している紹介会社を補充の速さの観点で運用し直す手順を解説します。
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看護職員6.4人・5人未満45.0%という規模構造
はじめに、訪問看護ステーションが置かれている規模の前提を数字で確認します。
令和7年4月1日現在、全国で稼働している訪問看護ステーションは18,754事業所です。指定を受けた事業所は19,314、うち560が休止中でした(一般社団法人全国訪問看護事業協会『令和7年度 訪問看護ステーション数 調査結果』)。
同じ調査によると、令和6年度中の新規開設は2,487件、廃止は886件、休止は355件でした。前年から1,425事業所増えた裏側で、1年に1,200件超が閉じるか止まっています。
拡大と退出が同時に起きています。この2つを結んでいるのが、1事業所あたりの規模です。

日本看護協会の実態調査では、1事業所あたりの看護職員数(常勤換算)の平均は6.4人でした。分布を見ると「5人未満」が45.0%、「5〜10人未満」が38.5%で、10人未満の事業所が8割を超えています(2022年9〜10月調査・有効回答1,879件。公益社団法人日本看護協会『2024年度 診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査』)。
看護職員5人の事業所で1人が退職すると、訪問を担う戦力の2割が一度に消えます。人材不足がそのまま経営リスクになるのは、この規模構造があるからです。
欠員1人が訪問とオンコールを止める仕組み
1人の欠員は、3つの経路をたどって事業に効いてきます。
1つ目は訪問件数の上限です。訪問看護の収入は訪問した件数に連動します。看護職員が1人減れば、その人が持っていた訪問枠がそのまま消え、翌月の売上に反映されます。募集から入職までに3か月かかれば、3か月分の枠が失われた状態が続きます。
2つ目は夜間対応の偏りです。訪問看護の主な夜間体制は「オンコール」が90.6%を占め、一晩あたりの対応体制は「1人の看護職員が対応」が75.3%でした。さらに看護職員5人未満の事業所では、1か月間にオンコールを担当した看護職員は平均2.6人にとどまります(同調査)。
当番を3人で回していた事業所から1人抜ければ、残る2人が交互に夜を持つことになります。同じ調査でも、夜間・休日対応の課題として「夜間・休日対応できる看護職員が限られているため負担が偏る」が69.6%、「看護職員の離職につながってしまう」が30.7%挙がりました。欠員が次の欠員を呼ぶ経路です。

3つ目は指定基準です。指定訪問看護ステーションは、保健師・看護師・准看護師を「常勤換算方法で、二・五以上となる員数」置くこと、そのうち1名は常勤であることが省令で定められています(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第60条)。
常勤3人で運営している事業所であれば、1人の退職で基準の下限に触れます。人材不足は、採用の課題である前に事業継続の課題になります。
最優先の打ち手は紹介会社の運用最適化
補充の速さを上げる打ち手のうち、最優先で手をつけるべきなのは、いま契約している人材紹介会社の運用を見直すことです。新しい募集チャネルを足すのは、そのあとで構いません。
理由は経路の長さにあります。求人媒体やスカウトは母集団づくりから始まるので、結果が出るまでの期間が読めません。
紹介会社は登録済みの看護師をすでに抱えており、条件が合えば最短で候補者が出てきます。欠員から逆算したとき、いちばん短い経路です。
これは紹介会社を置き換える話でも、契約を打ち切る話でもありません。いまの紹介会社はそのまま使いながら、動かし方だけを変えるという意味です。
補充を速める3つの運用
効きめの大きい順に並べます。
- 推薦が届いた当日に一次回答を返す
- 求人票にオンコール当番の実態と同行期間を数字で書く
- 紹介会社ごとに推薦数と決定までの日数を記録する
1点目の返信速度は、小規模の事業所ほど効きます。管理者が訪問に出ながら採用も見ている体制では、推薦の確認が翌日以降になりがちです。紹介会社の担当者は複数の求人を並行して抱えているため、反応が速い先から順に候補者を当てていきます。
2点目は訪問看護に固有の論点です。「オンコールあり」とだけ書かれた条件では、担当者が候補者に説明できません。
月あたりの当番回数、一晩の体制人数、緊急訪問の平均件数まで書かれていれば、紹介会社は該当者を迷わず絞れます。
3点目は、どの会社が実際に動いているかを見える形にすることです。契約している社数ではなく、推薦が出ている社数を数えます。
動いていない会社には求人の背景を伝え直し、動いている会社には情報を厚く渡します。この配分の判断が、補充までの日数を縮めます。
1件63万9千円という単価の重み
看護職の平均紹介手数料は63万9千円です(令和5年度実績。厚生労働省『地域ブロック別の職種別平均手数料額・分布について』)。看護職員6人規模の事業所にとって、1件あたりの金額としては軽くありません。
なお平均額の水準は、調査の主体と対象年度が変われば上下します。相場の幅そのものは看護師の採用にかかる費用の内訳で扱っています。
ここで手数料の値下げ交渉に向かうと、多くの場合は逆効果になります。手数料を下げた求人は、紹介会社の中で後回しにされやすくなるからです。
単価を削るより、1件あたりの決定率と補充までの日数を上げるほうが、費用対効果は改善します。
1社では足りない候補者の母数
訪問看護は、在宅での単独判断とオンコールという条件が加わるぶん、要件に合う候補者の層が病棟より薄くなります。1社の登録者だけを見ていると、そもそも母数が足りません。
エージェントコントロールとは、契約中の紹介会社をまとめて把握し、推薦が動くように運用を整えていく進め方です。くわしくは複数社を束ねる運用の全体像で解説しています。
ただし社数が増えるほど、窓口の対応や返信、候補者情報の管理量も増えます。管理者の業務が訪問と重なる事業所では、この運用は片手間では回りません。
この管理工数を人とAIで引き受けるサービスが一括エージェントです。各社とのやり取りと候補者情報をまとめて整理し、推薦への当日返信、求人票の書き直し、紹介会社との関係構築までを担います。
医療機関の例では、紹介会社を入れ替えずに運用を変えた結果、紹介数が約2倍になり、2ヶ月で看護師2名の採用につながりました(医療機関での導入の様子)。
紹介会社と契約はしているのに、今月の推薦は何件届いていますか
複数の紹介会社の運用最適化を軸に、訪問看護ステーションの補充を速くする手順をまとめました。当日返信の体制づくり、求人票に書くべき条件、紹介会社ごとの記録の付け方まで、サービス概要資料でご確認いただけます。
無料で資料を受け取る並走させる補助|入職後3か月の設計
補充を速くしても、同じ速さで人が抜けていけば残高は変わりません。第1の打ち手に並走させる補助として、定着の条件を先に決めておきます。
1つはオンコール負担の分散です。一晩1人体制が75.3%という前提のもとでは、当番が特定の人に寄った時点で離職の確率が上がります。電話の一次受けと訪問担当を分ける、当番明けの訪問を軽くするといった調整は、人数を増やさなくても着手できます。
もう1つは同行期間の設計です。在宅は現場で1人で判断する場面が多く、病棟から移ってきた看護師ほど不安が大きくなります。
同行の期間と、単独訪問に移す条件を入職前に決めておきます。求人票にも書いておくと入職後の齟齬が減り、紹介会社も候補者に説明しやすくなります。

これらは採用チャネルの代わりにはなりません。補充の速さを上げる第1の打ち手があってはじめて、定着の設計が効いてきます。
まとめ|補充の速さから設計し直す
この記事では、訪問看護ステーションの人材不足を、募集量ではなく補充の速さの問題として整理しました。
看護職員の平均は6.4人で、5人未満の事業所が45.0%を占めます。この規模では、欠員1人が訪問件数と夜間の当番、そして指定基準の3方向に同時に効きます。最優先の打ち手は、いま契約している紹介会社を補充の速さの観点で運用し直すことです。
とはいえ、当日の一次回答も、求人票の書き直しも、紹介会社ごとの記録も、訪問に出ながらとなると手が回りません。管理者が採用を兼任している事業所では、社数を増やした時点で管理が止まります。
一括エージェントは、この運用を人とAIで代行します。紹介会社との契約はそのままに、手間だけを外に出して補充までの日数を縮める、という位置づけです。
よくある質問
Q. 紹介会社との契約をやめて、自社採用に切り替えるべきですか
やめる必要はありません。看護職員が10人に満たない事業所では、募集から母集団をつくり直す体力のほうが不足しています。現実的なのは、いまの契約を維持したまま運用を最適化する順番です。当日の一次回答と条件の具体化だけでも、推薦の数と精度は変わります。手数料が重いと感じる場合も、単価の交渉より決定率と補充日数の改善のほうが効きます。
Q. 看護職員5人規模でも、複数の紹介会社と付き合えますか
社数そのものより、動いている社数を把握できているかが分かれ目です。訪問看護は要件に合う候補者の層が薄いため、1社だけでは母数が足りません。まずは既存の契約先を棚卸しし、直近3か月で推薦が出た会社と出ていない会社を分けます。管理量が限界を超えるようであれば、運用を外部に出す選択肢もあります。
Q. オンコールがある条件で、推薦を増やす方法はありますか
条件を伏せるのではなく、実態を数字で開示する方向が有効です。日本看護協会の訪問看護実態調査では「夜間・休日対応がネックとなり看護職員の新規採用が難しい」が36.0%挙がっており、夜間対応が採用のハードルになっているのは事実です。ただし、当番の回数や一晩の体制、緊急訪問の月平均件数まで開示すれば、紹介会社は納得したうえで応募できる人に絞って推薦できます。曖昧な記載のほうが、面談後の辞退を増やします。
欠員が埋まるまでの日数を、いまより短くする
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