医師が足りない地域と、全国の需給見通しのずれ

常勤医の募集をかけても、応募も推薦も届かないまま数か月が過ぎることがあります。診療科によっては、1年以上欠員が埋まらない状態が続きます。

院長や事務長からは「全国的に医師が足りないのだから仕方ない」「求人を出しても紹介が来ない」という声が挙がります。この理解のまま待ち続けると、外来の縮小にまで及びかねません。

医師の採用は、全国の人数ではなく地域と診療科の偏りの問題としてとらえ直す姿勢が欠かせないでしょう。そのうえで、募集経路の最多を占める紹介会社をどこまで動かせるかが、母集団の薄い市場での第一手になります。

本記事では、医師の需給の実際から、いま契約している紹介会社に推薦を出してもらうための運用まで解説します。

一括エージェントの記事一覧では、ほかの採用テーマも扱っています。

なお、医師の紹介手数料がいくらかかるか、どう抑えるかは医師の採用コストと紹介手数料で扱っています。本記事は金額ではなく、採用に届かない理由と入口の動かし方に絞ります。

国の医師需給推計では、労働時間の上限を週60時間とする需要ケース2で、全国の医師の需給は2029年頃に均衡すると見込まれています。同じとりまとめは、地域偏在と診療科偏在は依然として存在すると明記しています(2022年2月。厚生労働省『医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 第5次中間とりまとめ』)。

全国の人数が足りるようになっても、自院の地域と診療科の募集が楽になるとは限りません。医師の総数が増えても、配置の偏りが残るかぎり採用の難しさは続きます。

現場の感覚も、この偏りと重なります。2025年4月1日時点で職員が不足していると答えた324病院に不足職種を聞いたところ、医師を挙げた病院は38.9%でした(複数回答。独立行政法人福祉医療機構『2025年度 病院の人材確保に関する調査結果』 p.14)。

この調査の対象は同機構の融資先など434病院で、開設主体が公立の病院は含みません。以降の数値も同じ調査によります。

病院の廊下を歩く医師と看護師の様子
写真: Tima Miroshnichenko / Pexels

常勤医の採用活動で20.5%が採用に至らない

募集をしていないから採れないわけではありません。活動はしているのに、決まらないまま年度が終わる病院が一定数あります。

ここでは、常勤医の採用活動がどこで止まっているのかを解説します。

同じ調査で、2024年度の常勤医師の採用活動の状況を434病院に聞いています。採用活動を実施したものの採用に至らなかった病院は20.5%でした(福祉医療機構『2025年度 病院の人材確保に関する調査結果』 p.19)。

およそ5病院に1病院が、採用活動を行ったうえで欠員を埋められなかった計算になります。結果を分けるのは、その募集が候補者まで届いたかどうかです。

医師は、転職市場に出てくる人数そのものが限られます。公募に反応する層が薄いため、求人を公開して待つ形では母集団がほとんど積み上がりません。

そのため、採用活動に動いた病院のあいだでも結果は割れます。使う経路と、その経路に渡す情報の量が、そのまま結果に反映されます。


募集経路の最多は紹介会社、効いたと答えたのは43.9%

常勤医の募集で、病院がもっとも多く使っている経路は人材紹介会社です。ただし、使っている割合と、効いたと答える割合には開きがあります。

ここでは、入口が紹介会社に集まっている実態と、その開きが示すものを解説します。

2024年度に常勤医師の採用活動を実施した287病院のうち、募集の際に人材紹介会社を使った病院は78.4%で、経路のなかで最多でした(複数回答。福祉医療機構『2025年度 病院の人材確保に関する調査結果』 p.20)。

一方、採用に結び付く効果がもっとも高かった経路を1つ選ぶ設問で人材紹介会社を挙げた病院は、198病院中43.9%でした。設問ごとに母数は異なりますが、入口として使う病院の多さに対して、いちばん効いた経路として紹介会社を選んだ病院は半数に届きません。

この差は、紹介会社の力量だけで説明できるものではありません。同じ会社と契約していても、推薦が届く病院と届かない病院に分かれます。

紹介会社の担当者は、複数の求人を同時に抱えています。条件が整理されていて、返事の早い病院の求人から先に候補者へ案内されます。

医師の求人は希望条件の幅が狭く、紹介会社の側でも案内先を絞り込みます。そのなかで自院の求人が後回しになると、契約していても推薦は動きません。

契約が入口であるのは確かですが、契約の数だけで推薦の量が決まるわけではありません。入口をどこまで動かせるかが、母集団の薄い市場で手を付けられる部分になります。

推薦が止まる原因は紹介会社から推薦が届かない時の原因と打ち手で扱っています。

病院の事務室で採用の資料を見比べている様子
写真: Katrin Bolovtsova / Pexels

医師の推薦を増やす、契約と運用の2段の見直し

打ち手は2段に分かれます。契約している紹介会社の数をそろえる段階と、その契約を動かす段階です。

ここでは、2段それぞれの中身と、運用を回すときの負荷まで解説します。

1段目は契約社数の確保です。医師の紹介も成果報酬が基本で、契約を結んだ時点では費用が発生しません。

契約が1社のみの場合、その会社に条件の合う医師が登録していない時点で手が止まります。契約を増やす方向は、母集団の薄い職種ほど意味を持ちます。

何社まで回しきれるかの決め方は人材紹介は何社と契約すべきかにまとめています。

2段目は、増やした契約を動かす運用最適化です。推薦の量が動くのは、この2段目です。

運用でそろえる項目は、以下のとおりです。

  • 診療科・当直の有無・オンコールの頻度・常勤非常勤の別を、各社の担当者に同じ内容で渡す
  • 推薦や日程の連絡には当日中に返し、見送る場合も理由を一言添える
  • 会社ごとの推薦数と面談数を月単位で記録し、動いている会社に情報を厚く渡す

どれも特別な仕組みは要りません。ただし契約社数が増えるほど、この3つにかかる手間は社数の分だけ積み上がります。

念のため補足すると、これは紹介会社を置き換える話でも、契約をやめる話でもありません。今ある契約はそのまま使いながら、渡す情報と返信の速さを変える進め方です。

複数の紹介会社を横断で管理して推薦を増やす取り組みを、エージェントコントロールと呼びます。仕組みは複数の人材紹介会社を最適化する方法にまとめています。

とはいえ、診療と経営の合間にこの運用を毎週回し続けるのは、院内の人手だけでは無理が出ます。この部分は、人とAIの体制をとる一括エージェントが代行します。

AIが各紹介会社とのやり取りや候補者情報を横断で整理し、人が当日の返信や求人情報の調整、紹介会社との関係づくりを受け持ちます。

一括エージェントが紹介会社の運用を代行した医療機関の例では、各社からの紹介数が約2倍になり、2ヶ月で看護師2名の採用が決まりました。

契約している紹介会社、今月は何社から推薦が届きましたか?

複数の紹介会社の運用最適化で、常勤医の募集にどこまで推薦を集められるか。推薦への当日反応・求人情報の伝え直し・会社別の実績管理をどう仕組み化するかを、サービス概要資料にまとめました。無料でお送りします。

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入職後の食い違いを防ぐ、条件のすり合わせ

常勤医の採用は、入職が決まった時点では終わりません。早い段階で辞められると、欠員の状態に戻ります。

ここでは、紹介経由の入職で早期の離職が起きやすい事情と、運用に組み込む確認を解説します。

病院を対象にした国の調査では、民間の職業紹介事業者を経由して入職した医師の6か月以内離職率は19.0%で、紹介以外の経路で入職した医師の3.6%を上回りました(2019年調査。厚生労働省職業安定局『医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査 集計結果(概要)』 PDF p.11)。

紹介会社に問題があるという話ではありません。紹介経由の入職は、面識のない相手と短い期間で条件をすり合わせて決まるため、入ってからの食い違いが表に出やすくなります。

やることは、募集の段階で渡す情報を具体的にしておくことです。当直の回数、オンコールの頻度、外来の枠数、他科との分担といった、入職後の1週間が見える情報です。

この情報は、採用の入口でも役に立ちます。同じ材料が、紹介会社の担当者が候補者に語れる言葉になります。

面接で合意した条件は口頭で終わらせず、書面に残しておきます。採用の運用に、この確認までを含めておくと食い違いが減ります。

病院の会議室で院長と事務長が打ち合わせをしている様子
写真: Sora Shimazaki / Pexels

まとめ|医師採用の難しさの正体と、動かせる部分

本記事では、医師の需給の実際から、紹介会社を動かす2段の進め方までを整理しました。

持ち帰る要点は、次の3点です。

  • 全国の需給は2029年頃に均衡する推計だが、地域偏在と診療科偏在は残る見込み
  • 常勤医の採用活動を実施しても、採用に至らなかった病院が20.5%
  • 募集経路の最多は人材紹介会社の78.4%、もっとも効いたと答えたのは43.9%

医師の採用が難しいのは、全国の人数が足りないからではなく、自院の地域と診療科に人が回っていないためです。市場の側から緩むのを待つより、入口である紹介会社をどこまで動かせるかが、実際に手を付けられる部分になります。

ただし、各社への情報の渡し直し、推薦への当日の返信、会社別の推薦数の記録を、診療と経営の合間に続けるのは重い作業です。契約社数を増やすほど、この負荷は上がります。

一括エージェントは、複数の紹介会社への当日反応から求人情報の最適化、会社別の実績管理までを人とAIで代行します。今の紹介会社はそのまま使いながら、運用の手間だけを外に出す形で常勤医の募集を前に進められるでしょう。

まずは、契約している紹介会社の数と、直近3か月の推薦数を書き出すところが出発点になります。

よくある質問

Q. 常勤医の推薦が届かない紹介会社は、契約を切ったほうがよいですか

切る必要はありません。医師の人材紹介は成果報酬が中心で、契約を保つこと自体に費用は発生しません。推薦が届かない原因は、会社側の力量よりも、渡している求人情報の薄さや返信の遅れにあることが多くあります。診療科・当直・オンコールの条件を具体的に伝え直し、推薦への返信を当日に戻したうえで、3か月の推薦数を見比べる進め方が現実的です。そのうえで動いている会社に情報を厚く渡すと、全体の推薦数は変わってきます。

Q. 医局人事に頼れない場合、常勤医はどこから探せばよいですか

人材紹介会社が主な経路になります。2024年度の調査でも、常勤医の募集に使った経路は紹介会社がもっとも多く、医局人事がこれに次ぎました。経営陣の人脈や院内の医師からの紹介も並走させられますが、いずれも声をかけられる相手の数に限りがあります。紹介会社を複数そろえて推薦を受けながら、人脈経由の声かけを足す順番が、欠員の埋まる期間を短くします。

Q. 紹介会社から採用した医師が早期に辞めるのを防ぐには何が必要ですか

募集の段階で、入職後の働き方を具体的に伝えておくことです。当直の回数、オンコールの頻度、外来の枠数、他科との分担まで書いた資料を各社に渡し、候補者へそのまま伝えてもらいます。面接で合意した内容は書面に残し、入職後も業務量の偏りを定期的に確認します。食い違いが出やすいのは給与よりも、こうした日々の働き方に関する部分です。


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