訪問介護では、人の配置が運営の前提になっています。利用者が増えれば、置くべきサービス提供責任者の数も変わります。
現場では「募集をかけても応募がない」「サービス提供責任者が抜けたら回らない」といった声が聞かれます。
訪問介護費の算定基準には、通所介護のような人員基準欠如減算の規定が置かれていません。基準を満たせない状態は報酬が削られる形では済まず、指定の取消や効力停止に向かいかねません。
欠員が出てから探すのでは間に合わず、平時から複数の紹介会社と契約し、推薦が届く状態を保つ備えが欠かせないでしょう。
本記事では、減算の規定が置かれていない事実から、欠員より前に人を確保する採用の組み立てまで解説します。
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訪問介護に置かれていない人員基準欠如減算
通所介護には、職員の数が基準に届かない月の報酬を下げる人員基準欠如減算が設けられています。訪問介護には、これにあたる規定が見当たりません。
ここでは、規定が置かれていないことを、報酬の算定基準と自治体の手引きの2つから解説します。
減算の対象を定めた告示(平成12年厚生省告示第27号)を通して読むと、訪問介護とサービス提供責任者という語が出てきません(厚生労働省法令等データベース)。
算定基準の取り扱いを示した通知(老企第36号)でも、人員基準欠如に該当する場合の単位数の算定は、通所介護費や通所リハビリテーション費の項に置かれています(厚生労働省(老企第36号関係))。
自治体が配っている手引きも同じです。横浜市の訪問介護の手引きで減算として並ぶのは、同一建物等に居住する利用者に対する減算、高齢者虐待防止措置未実施減算、業務継続計画未策定減算です(横浜市『運営の手引き 訪問介護/訪問介護相当サービス』)。
兵庫県の手引きも、減算の一覧は高齢者虐待防止未実施減算、業務継続計画未策定減算、共生型訪問介護の場合、同一建物減算で、人員基準欠如減算の項目がありません(兵庫県『訪問介護の手引き』)。
一方、横浜市が通所介護向けに出している手引きには、職員の人員欠如による減算が項目として明記されています(横浜市『運営の手引き 通所介護/横浜市通所介護相当サービス』)。

報酬の一部を差し引いたうえで事業を続ける、という調整の余地が制度上ありません。人員の基準を満たせない状態は、指定そのものの話として扱われます。
基準を欠いた状態が向かう先
訪問介護で人員の基準を満たせなくなった場合、その状態は介護保険法の指定の規定で扱われます。
ここでは、法律上の取り扱いと、実際に出された行政処分の件数を解説します。
介護保険法は、事業所の従業者の人員が都道府県の条例で定める員数を満たせなくなった時、知事が指定を取り消すか、期間を定めて指定の効力の全部または一部を停止できると定めています(介護保険法第77条第1項)。
指定が取り消されたり効力が停止されたりすれば、その期間は利用者を受け入れられません。人員の配置は、事業を続けるための要件として置かれています。
厚生労働省の集計では、令和6年度に指定取消等の行政処分を受けた事業所は、指定訪問介護事業所が30件で最も多くなっています(指定取消と指定の効力停止の合計。厚生労働省『令和6年度における指導・監査及び指定取消処分等の状況』)。
この30件の処分理由の内訳は、公表されている資料からは分かりません。人員の基準に関するものに限られず、不正請求なども含まれます。
事業所の数そのものも減る方向にあります。
自治体への調査では、令和6年6月から8月にサービスを休止または廃止した事業所が、前年の同じ時期と比べ、訪問介護では概ね1割程度増えていました(回答のあった自治体の集計。厚生労働省の自治体調査)。
職員の確保は、募集の巧拙にとどまる問題ではありません。指定を維持できるかどうかに、直接つながっています。
サービス提供責任者の必要人数が動く仕組み
訪問介護で配置が問われる中心は、サービス提供責任者です。必要な人数は、事業所の規模ではなく利用者の数で決まります。
ここでは、必要人数の決まり方と、欠員が起きやすい局面を解説します。
省令では、利用者40人ごとに1人以上のサービス提供責任者を置くことが求められています。利用者40人までは1人、そこを超えたところで2人、という増え方です(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第5条)。
人数は常勤の職員で数える方法のほか、勤務時間を常勤に換算して満たす方法も認められています。
判定に使う利用者の数は、直近3か月の平均で見ます。1か月だけ増えても即座に必要人数が上がるわけではなく、増えた状態が続くと基準が動きます。

必要人数が上がるのは、事業が伸びている局面です。新規の依頼を受けるほど平均が押し上げられ、配置が追いつかない時期が生まれます。
そこに退職が重なると、利用者を減らすか、人を増やすかの選択になります。前者は売上に直結し、後者は採用にかかる期間に左右されます。
サービス提供責任者は実務経験や資格の条件があり、募集してすぐに集まる枠ではありません。訪問介護の採用の実情と手数料の考え方は訪問介護の紹介手数料にまとめています。
欠員より前に人を確保する採用の組み立て
欠員が起きてから募集を始めると、基準を満たせない期間がそのまま発生します。採用に要する期間を踏まえると、動き出しは欠員の前になります。
ここでは、確保の打ち手を、契約先の複数化と運用の最適化の2段に分けて解説します。
欠員に備えた契約先の複数化
1段目は、人材紹介会社との契約先を複数持っておくことです。
人材紹介の契約は成果報酬が中心で、締結の時点では費用がかかりません。求人票を渡しても、候補者の推薦を受けても、入社が決まるまで請求は起きません。
預け先が1社に限られると、その会社の登録者に条件の合う人がいない期間は、推薦がまったく届きません。複数と契約していれば、1社で止まった時も別の会社の登録者から候補が上がります。
適正な社数の考え方は何社と契約すべきかで扱っています。
人の確保が紹介会社だけで完結するわけでもありません。職員からの紹介や、福祉人材センター・ハローワークの求人も並行して動かせます。
ただ、資格と経験が問われる枠では、転職を決めた人に会える経路を複数持っておくほうが、埋まるまでの期間は短くなります。
預けた求人を動かす運用最適化
2段目が本丸です。社数だけを積み上げても、届く推薦の量はそのままです。
やり取りする相手が増えるぶん、連絡の本数も候補者の管理も膨らみます。返答が遅れる依頼主は、紹介会社の社内で優先度が下がり、推薦の順番が後ろになります。
複数の紹介会社の運用最適化は、どの会社がどこまで動いているかを横断で見ながら、止まった箇所に手を入れる進め方を指します。全体像は複数の紹介会社を束ねる運用の考え方で解説しています。
訪問介護では、担当者に渡す情報の中身が推薦の質を左右します。直行直帰の可否、受け持つ利用者の状況、サービス提供責任者が兼務する範囲といった働き方の輪郭は、条件欄の記載だけでは伝わりません。
取引先を入れ替える必要はありません。今の紹介会社をそのまま使いながら、渡す情報の中身と返答の速さだけを整えていく形です。
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まとめ|欠員の前から動かしておく採用の体制
本記事では、訪問介護に人員基準欠如減算が置かれていない事実から、欠員より前に人を確保する採用の組み立てまでを整理しました。要点を3点にまとめます。
- 訪問介護費の算定基準にも自治体の手引きにも、人員基準欠如減算にあたる項目が見当たらない
- 基準を満たせない状態は指定の取消や効力停止の対象で、令和6年度の行政処分は訪問介護が30件と最多(理由の内訳は不明)
- 備えの順番は契約先の複数化が先で、預けた求人を動かす運用の最適化が本丸
利用者が増えるほど必要な配置も上がるため、欠員は事業が伸びている時期にこそ起こります。採用にかかる期間を踏まえると、平時のうちに推薦が届く状態を保つ進め方が現実的です。
複数の紹介会社からの推薦にその日のうちに応じ、事業所の状況を各社へ伝え直す作業は、管理業務と兼任する立場には負担が大きくなります。
一括エージェントは、各社への連絡と求人票の更新、推薦の進捗管理といった日々の作業を人とAIで代行します。今の取引先を維持したまま運用の手間だけを預けることで、欠員より前に動ける体制に近づけられるでしょう。
よくある質問
Q. 訪問介護でサービス提供責任者が欠けた場合、介護報酬は減額されますか
訪問介護費の算定基準には、人員基準欠如減算にあたる規定が見当たりません。通所介護には職員の人員欠如による減算が設けられていますが、自治体の手引きで訪問介護の減算として並ぶのは、同一建物等に居住する利用者に対する減算、高齢者虐待防止措置未実施減算、業務継続計画未策定減算などです。ただし、報酬の面で調整が入らないことと、基準を満たさないままでよいことは別の話です。人員の基準を満たせない状態は、介護保険法にもとづく指定の取消や効力停止の対象になります。
Q. 人員基準を満たせなくなった時点で、すぐに指定が取り消されるのですか
自動的に取り消されるわけではありません。介護保険法は、人員の基準を満たせなくなった場合に、都道府県知事が指定を取り消すか、期間を定めて効力の全部または一部を停止できると定めています。判断するのは指定を行った自治体で、確認や指導の過程を経て決まります。とはいえ、判断に幅があること自体は、基準を割った状態を続けてよい根拠にはなりません。指定の更新や運営指導の場面でも、配置の状況は確認されます。
Q. サービス提供責任者が採用できません。紹介会社との契約は見直すべきですか
やめる必要はありません。資格と実務経験が問われる枠では、転職を決めた人に最短で会える経路として人材紹介は有効です。推薦が届かない状態の背景には、契約先が1社にとどまっていることと、求人の背景が担当者に伝わっていないことが重なっている場合が多くあります。既存の取引を続けながら預け先を増やし、各社が動く状態を保つほうが、現実的な打ち手になります。
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