人事や採用の担当が実質1名で、労務や給与の手続きを兼務している企業は多くあります。中途採用で複数の人材紹介会社に求人を預けると、連絡を取る相手はその社数ぶんに増えます。

担当者からは「同じ説明を各社に何度もしている」「日程調整だけで午前が終わる」という声が挙がります。兼務の合間に往復が溜まっていくと、推薦が届いても返事が遅れ、採れるはずだった候補者を取り逃がしかねません。紹介会社の数を減らす前に、自分の判断が要る決定だけを手元に残し、日程調整や催促といった往復を外へ出す線引きが要になるでしょう。

本記事では、ひとり人事の採用が止まる位置から、手元に残す決定と外に出せる往復の分け方まで解説します。

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兼務で細切れになるひとり人事の採用

採用の担当が1人という体制は、例外的な状態ではありません。中小企業では珍しくない形です。

ここでは、ひとり人事が置かれている体制の実態と、最初に取る1つの行動を解説します。

採用活動を行っている中小企業の経営者334名への調査では、社内の採用担当者が1人と答えた企業が34.7%でした(株式会社Cavitte『中小企業の「採用活動」に関する調査』)。

この体制のままでも、採用の結果は変えられます。ただし、計画どおりに進んでいない企業が現状では目立ちます。

中途採用を実施し、採用予定者数と採用者数の両方を回答した中小企業2,389社のうち、予定者数に届かなかった企業は約3割でした(日本政策金融公庫総合研究所『中小企業における従業員の採用・定着に関する調査』)。

ひとり人事が採用を回す鍵は、紹介会社との往復を自分の手から外へ出すことにあります。取引する紹介会社の数を減らす必要はありません。

最初に取る行動は1つです。いま抱えている採用業務を「決定」と「往復」の2つに分けて書き出します。

書き出すと、判断を含まない作業がどれだけの本数あるかが見えます。日程の候補を送る作業、返事が来ない社への催促、進み具合を表にまとめる作業は、どれも判断を含みません。

オフィスのデスクで書類とノートパソコンに向かい、一人で業務を進めている女性の手元
写真: Mikhail Nilov / Pexels

自分が着手しないと止まるタスクの数

ひとり人事の制約は、採用に充てられる時間の総量だけではありません。採用の仕事が他の業務との間で何度も中断される点にあります。

ここでは、兼務の合間で往復が溜まっていく仕組みを解説します。

採用の作業は、相手の返事を待つ場面と、自分が手を動かさないと先へ進まない場面が交互に並びます。候補日の提示、面接官の空き確認、日程変更への対応、確定の連絡は、すべて後者にあたります。

全国の企業の採用担当者・人事責任者1,002名への調査では、応募者1名の面談日程調整にかかる作業時間は中央値で約14分でした(株式会社ゼクウ『採用業務の「見えない工数」実態調査2026』)。

1名で14分なら、重い作業には見えません。預けた5社から各2名の推薦が届いた週は、日程調整だけで2時間を超える計算になります。

この時間は、まとめて確保できる形では現れません。給与の締めや入退社の手続きの合間に、数分ずつ割り込んできます。中断が入るたび、どこまで進めていたかを思い出す時間も加わります。

採用の手が足りない事情は、中小企業への調査に寄せられた声にも表れています。人事の専任者がいないため、ほかの業務との兼ね合いで採用まで手が回らないという回答です(前掲・日本政策金融公庫総合研究所の調査)。

着手されないまま残った往復は、止まったままになります。その先では、紹介会社の担当者が返事を待っています。

依頼先の担当者は、何社もの求人を同時に抱えています。返事が戻らない求人へは次の候補者を当てにくくなるため、自社の求人は各社の中で後ろへ回ります。

推薦の件数が落ちたように見える局面でも、きっかけが自社側の返事の遅れにあることは珍しくありません。

カレンダーを表示したタブレットの横で、開いたノートにペンで書き込んでいる人の手元
写真: cottonbro studio / Pexels

判断と往復を分ける

採用業務のうち、担当者本人でなければ決められない仕事は限られています。残りは、進め方が先に決まっていれば誰でも同じ結果を出せる作業です。

ここでは、手元に残す決定と外に出せる往復の線引きを解説します。

手元に残すのは、以下の3つです。

  • 求める人物像の確定
  • 見送る理由の判断
  • 提示する条件の決定

この3つは、社内の事情と直結しています。どの部署で何を任せたいのか、どこまでの経験なら面接へ進めるのか、年収をいくらまで出せるのか、いずれも担当者が社内と握った内容がそのまま答えになります。

同じ採用担当者1,002名への調査では、選考が滞る主な原因として「社内の合否判断・条件調整」を挙げた人が40.2%で最も多くなりました(最大3つまでの複数回答。前掲・株式会社ゼクウの調査)。

判断の側が止まると、選考はそこで進みません。だからこそ、判断に時間を割ける状態を先につくる順番になります。

外に出せるのは、判断を含まない往復です。内容は以下のとおりです。

  • 面接日程の調整
  • 返信の催促とリマインド
  • 各社への同じ説明の繰り返し
  • 社ごとの進捗の集約

4つとも、決め方が先に定まっていれば手を動かす人が替わっても結果は変わりません。面接枠と選考フローを先に渡しておけば、日程の提示は担当者本人を通さずに進みます。

外に出す前に、決め方の側を言葉にしておく必要があります。見送りの基準と年収の上限が担当者の頭の中にあるままでは、往復のたびに確認が戻ってきます。外に出せる範囲は、基準を書き出した量で決まると考える姿勢が重要です。

なお、担当者が1人だからといって、依頼先を1社に絞る進め方は実態に合いません。成果報酬型をとる紹介会社が多く、契約を結ぶ段階では費用が生じません。

そのため、依頼先は増やす側で考えられます。紹介会社を何社まで持つかの目安は社数を決める手順で扱っています。

増やした社数の情報を頭の外へ出して管理する仕組みは、複数社の管理を立て直す枠組みにまとめています。

往復を外に出して、判断に時間を使う状態へ

複数の紹介会社の運用最適化を引き受け、担当者が1人のままでも推薦が止まらない状態へ寄せていきます。サービス概要資料では、日程調整と催促の引き受け方、各社への募集条件の渡し方、社ごとの決定実績の集め方をどこまで任せられるかがわかります。手元に残す判断との線引きも、資料のなかで確認できます。

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往復の引き受け先は、採用担当者を増やすことだけではありません。各社とのやりとりを横断でまとめて受け持つ運用代行があります。

一括エージェントの役割は、いま取引している紹介会社をそのまま使いながら、社外との往復だけを人とAIで代行することです。候補者の進み具合と各社からの連絡はAIが1つの画面にまとめ、募集条件の手直し、担当者への連絡、推薦に対する当日の返事は人が担います。

求める人物像の確定と合否の判断は、担当者の手元に残ります。いま依頼している紹介会社を解約する手続きも、別の会社へ乗り換える作業も発生しません。

複数の紹介会社を横断で動かす運用はエージェントコントロールと総称されます。進め方の全体像は紹介会社を束ねて動かす運用にまとめています。

医療機関の例では、運用代行を始めてから、紹介会社を1社も替えずに届く推薦の件数が約2倍になり、看護師2名の採用が2か月のうちに決まりました。医療の職種で出た数値であり、ほかの職種で同じ結果になる保証はありません。


まとめ|決定を手元に残し、往復を外に出す

本記事では、ひとり人事の採用が止まる位置から、手元に残す決定と外に出せる往復の分け方までを整理しました。ここまでの要点は3つです。

  • 採用担当が1人という体制は中小企業では珍しくなく、体制を変えずに回す前提で設計する
  • 採用が止まるのは時間の総量ではなく、自分が着手しないと進まない往復が兼務の合間に溜まるため
  • 人物像の確定と見送りの判断と条件の決定は手元に残し、日程調整と催促と各社への説明は外へ出す

今週の採用業務を決定と往復に分けて書き出すところが、着手の入口になります。

ホワイトボードに貼った付箋をグループに分けながら業務を整理している人の様子
写真: Yan Krukau / Pexels

とはいえ、分けたあとの往復を毎日こなす時間を、兼務のまま確保するのは難しくなります。預けた求人の数が増えるほど、往復の量も増えていきます。

外へ移せるのは、この往復の側です。一括エージェントでは、各社へ同じ内容の募集条件を届けること、推薦に対する当日の返事、面接日程の調整、社ごとの決定実績の集約までを引き受けます。

採用の担当者が1人のままでも、紹介会社からの推薦が止まらない状態へ近づきます。

よくある質問

Q. ひとり人事が採用で自分の手元に残すべき業務はどれですか

社内の事情と直結する決定の3つです。求める人物像の確定、見送る理由の判断、提示する条件の決定がこれにあたります。一方で、日程の調整、返信の催促、各社への同じ説明、進捗の集約には判断が入りません。この区分で業務を2つに分け、判断を含まない側から手を離していくと、1人の体制のままでも処理できる量が増えます。

Q. 採用の担当者を増やさないまま、紹介会社からの推薦を増やせますか

増やせます。推薦の件数を左右するのは担当者の人数ではなく、各社に渡している募集条件の中身と、推薦が届いてから返事が戻るまでの速さです。各社の担当者は何社もの求人を同時に抱えているため、返事が早く戻る求人を先に動かします。返信を当日のうちに戻し、見送りの理由を一言添える運用に替えるだけでも、いま預けている会社から届く件数は動きます。

Q. ひとり人事では手が回らないので、人材紹介の利用自体をやめたほうがよいですか

やめる必要はありません。手が回らない原因は紹介という手法ではなく、各社との往復をすべて担当者1人が抱えている運用の側にあることが大半です。紹介を止めると、求人サイトの応募対応や自社での候補者探しが同じ担当者に戻ってくるため、作業の総量はかえって増えます。現実的なのは、契約を持ったまま、判断が要る決定だけを手元に残して往復を外へ出す進め方です。


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