人材紹介の契約は、成功報酬型が主流です。求人を預けている間は費用がかからず、入社が決まった時点で、想定年収に料率を掛けた手数料を支払います。

採用の現場では「手数料が高い」「料率を値引きできないか」といった声が聞かれます。

ただ、料率の交渉だけに時間を使うと、動かせる幅の狭い場所で消耗し、採用そのものが遅れかねません。

成功報酬型は紹介会社の売上が決まった時にしか立たず、各社の工数は決まりやすい求人へ寄ります。負担を実際に軽くするには、料率よりも契約社数と自社側の運用を動かす視点が欠かせないでしょう。

本記事では、成功報酬型で企業が負う負担から、値引き交渉で動く範囲、実コストを下げる順番まで解説します。

人材紹介の運用に関する記事は記事一覧にまとめています。


成功報酬型で企業が負う2つの負担

成功報酬型とは、採用が決まった時にだけ手数料が発生する契約です。求人票を渡す段階でも、推薦を受けて面接をする段階でも、費用は発生しません。

ここでは、この仕組みのもとで発注側が負う負担を、支払いの重さと推薦の偏りの2つに分けて解説します。

決定の時点に集中する支払い

1つ目は、1件あたりの金額が大きく、支払いが決定の時点に集中する点です。

手数料は想定年収に料率を掛けて計算します。年収の高い人材ほど1件の金額は上がり、同じ月に2名の入社が重なれば、その月の採用費は一気に膨らみます。

決まるまで費用が出ていかない点は、発注側にとって扱いやすい仕組みです。一方で、支払いの時期を自社の予算の都合で選べない性質もあります。

料率の水準や職種ごとの差は人材紹介の手数料相場にゆずり、本記事は次の負担に進みます。

決まりやすい求人に寄る工数

2つ目は、推薦の配分が偏る点です。

紹介会社の側から見ると、成功報酬型は入社が決まるまで売上が立ちません。候補者との面談も、推薦書類の作成も、企業との日程調整も、決まらなければ回収できない工数です。

そのため各社は、限られた人手を決まりやすい求人から順に配分します。求める条件が厳しい求人、選考の回数が多い求人、返信が遅く進み方の読めない求人は、後回しになりやすくなります。

これは担当者の熱意の問題ではありません。売上が決定の時にしか立たない報酬の設計から、自然に生まれる配分です。

オフィスの会議室で採用担当者が請求書と資料を見ながら打ち合わせをしている様子
写真: Sora Shimazaki / Pexels

「手数料が高い」という感覚の内側には、支払いの重さに加えて、この配分の偏りが混ざっています。そして偏りのほうは、料率を交渉しても解けません。


手数料の値引き交渉で動く範囲

料率の引き下げは、負担を軽くする打ち手として最初に思いつくものです。ただし動かせる幅は、制度と紹介会社の採算の両面から決まっています。

ここでは、値引きで動く範囲を、法律上の決まりと、決まらなかった求人の工数という2つの角度から解説します。

届け出た手数料表の枠内という制約

有料の人材紹介会社が手数料を受け取る方式は、法律で決められています。実務で多いのは、手数料の種類と金額をまとめた表を事前に厚生労働大臣へ届け出て、その表に沿って請求する方式です(職業安定法第32条の3)。

個別の相談も、この届け出た枠の中で行われます。担当者の判断でいくらでも下げられる性質のものではなく、社内の決裁も表を基準に進みます。

提示された料率が動かない時、担当者が渋っているとは限りません。表の下限に近い水準が、最初から出されていることもあります。

決まらなかった求人の工数も含む手数料

もう1つの理由は、手数料が引き受けている工数の範囲です。

令和6年度に有料の職業紹介事業者が受け付けた常用の求人のうち、実際に就職まで至ったのは約5%でした(求人数は複数の事業者への重複計上を含みます。厚生労働省が公表した職業紹介事業報告書の令和6年度集計結果(速報))。

預かった求人の大半は、売上にならないまま終わります。1件の手数料は、決まった案件の工数だけでなく、決まらなかった求人に費やした工数までを含めて組まれています。

値引きの原資が薄いのは、この収益の構造によるものです。小幅な調整はあり得ても、負担の感覚が変わるほどの引き下げは、はじめから想定されていません。

料率を大きく下げた求人は、紹介会社の中で優先度が下がります。同じ工数で得られる売上が小さくなるため、推薦が後回しになる場面が出てきます。交渉そのものは問題ありませんが、下げ幅と推薦の量は連動していると考えておく姿勢が重要です。

交渉に意味がないという話ではありません。複数名の採用をまとめて依頼する時の条件や、支払い時期の相談には、現実に動く余地があります。

ノートパソコンの画面で見積書の数字を確認するビジネスパーソンの手元
写真: Wolf Art / Pexels

それでも、動く幅は狭いままです。ここに時間を集中させても、1採用あたりのコストは大きくは変わりません。


料率より大きく動く1採用あたりの実コスト

料率が同じでも、1人を採用するまでにかかるコストは企業ごとに違います。決定までに社内が使った時間と、決まらずに流れた選考の分が、手数料の外側に積み上がるためです。

面接の日程調整や書類選考の滞留、面接後の連絡の遅れは、請求書には載りません。ただ、採用担当者の時間としては確実に消費されています。

内定まで進んだ候補者に辞退された選考も、費やした時間だけが残ります。料率をわずかに削るより、この滞留と取りこぼしを減らすほうが、1採用あたりの負担は大きく動きます。

ここでは、実コストを下げる打ち手を、契約社数の確保と運用の最適化という2段で解説します。

まず契約社数の確保

1段目は、契約している紹介会社の数を確保することです。

成功報酬型では、契約を結ぶこと自体に費用はかかりません。求人を預けても、推薦を受けても、決まらなければ支払いは発生しない仕組みです。

1社だけに預けている状態では、その1社の中で自社の求人が後ろに回った時点で動きが止まります。契約先が複数あれば、どこかで止まっても別の経路が残ります。

適正な社数の判断や増やす手順は何社と契約すべきかにまとめています。

増やした契約を動かす運用の最適化

2段目が本丸です。契約先を増やしただけでは、推薦の量は変わりません。

窓口が増えるぶん、返信の本数も候補者情報の管理も増えます。返信が滞れば、決まりやすい求人から工数を配分する紹介会社の目には、進みにくい取引先として映ります。

エージェントコントロールは、複数の契約先を一覧で把握し、各社の推薦が止まらないように手を入れていく進め方を指します。

中身は主に、求人の背景を担当者に伝わる言葉で渡すことと、届いた推薦にその日のうちに返すことの2点です。実際の回し方は複数社を束ねる運用の考え方にまとめています。

これは紹介会社を置き換えたり、付き合いをやめたりする話ではありません。今の契約先を維持したまま、渡す情報と反応の速さだけを変える進め方です。

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とはいえ、契約先すべてへの当日返信や求人票の更新を、他の業務と兼任しながら続けるのは容易ではありません。この部分を人とAIで引き受ける仕組みが、一括エージェントによる運用代行です。

各社との連絡や候補者の状況をAIが整理し、当日の返信や求人票の手直し、担当者との折衝を人が受け持ちます。運用を代行した医療機関の例では、各社からの紹介数が約2倍になり、2か月で看護師2名の採用が決まりました。

複数の担当者がホワイトボードの前で採用の進捗を確認している様子
写真: Moe Magners / Pexels

まとめ|料率ではなく、契約社数と運用を動かす

本記事では、成功報酬型で企業が負う負担と、値引き交渉で動く範囲、実コストを下げる順番を整理しました。要点は次の3点です。

  • 負担は支払いの重さと、決まりやすい求人へ推薦が偏ることの2つ
  • 実務では手数料は届け出た表の枠内で決まり、就職まで至る求人は約5%にとどまる
  • 実コストが動くのは契約社数の確保と運用の最適化で、順番は社数が先

料率の交渉に時間をかけても、動く幅は限られています。同じ時間を契約社数と運用に向けたほうが、1採用あたりの負担は下がります。

ただ、増やした契約先すべてに当日中に返信し、求人票を各社の担当者に合わせて更新し続ける作業は、他の業務と並行する採用担当者には重い負担です。

一括エージェントが受け持つのは、契約先ごとの推薦管理と当日の返信、求人票の手直しを含む日々の運用です。今の契約先はそのままに、手間の部分だけを外へ出す形で、1採用あたりのコストを下げられるでしょう。

よくある質問

Q. 成功報酬型は割に合わないので、人材紹介の利用はやめるべきでしょうか

やめる必要はありません。転職を決めた候補者に最短で会える経路として、人材紹介は今も有効です。負担が重く感じられるのは、料率そのものよりも、1社に預けたまま推薦が動かず、決まらない選考の時間だけが積み上がっている状態によるものが大半です。今の契約はそのままに、契約社数を確保し、複数社を動かす運用を整えるほうが現実的な打ち手になります。

Q. 値引きを申し入れると、紹介会社との関係に影響しますか

申し入れそのもので関係が壊れることは、まずありません。ただし、大きく下げた求人は同じ工数で得られる売上が小さくなるため、社内での優先度が下がります。推薦の量が落ちる可能性まで含めて判断する必要があるでしょう。条件を相談するなら、料率だけを切り出すより、複数名の採用や支払い時期をあわせて話すほうが、双方に無理のない着地になります。

Q. 条件の厳しい求人でも、推薦は増やせますか

増やせます。決まりやすさは、給与や経験年数だけで決まるわけではありません。任せる業務の中身や選考の進め方が担当者に伝わっていない求人は、紹介しにくい求人として扱われます。求人の背景を言葉にして各社に渡し、届いた推薦にその日のうちに返すだけでも、扱いは変わります。あわせて契約社数を確保しておくと、1社で止まった時の影響を抑えられます。


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