中途採用で人材紹介会社に依頼する時は、社内の稟議が先に立ちます。申請の書式を開いたところで、金額を書く欄の前で手が止まる場面が出てきます。

採用担当者からは「いくらかかるのか書けない」「決裁者に説明する材料がない」という声が挙がります。確定していない金額を1つの数字で埋めると、根拠を問われて差し戻され、募集の開始がそのぶん後ろへずれかねません。支出が発生しない契約の決裁と、入社で金額が確定する手数料の決裁を、2段に分けて立てる進め方が欠かせないでしょう。

本記事では、稟議書の金額の欄が埋まらない理由から、決裁を2段に分ける立て方と決裁者の問いにそろえる材料まで解説します。

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人材紹介の稟議が埋まらない欄

稟議が止まる位置は、たいてい1か所に決まっています。金額を書く欄です。

ここでは、人材紹介の費用が稟議書の様式とかみ合わない理由を解説します。

稟議書の金額の欄は、支出の総額が事前に決まる取引を前提に作られています。備品の購入や月額の利用料のように、申請した時点で払う額が出ている支出を書くための欄です。

成果報酬型をとる紹介会社が大半で、対象者の入社が決まるまで手数料の額は確定しません。募集の段階では想定する年収の幅も広く、1つの数字に落とせない状態が続きます。

そのため、同じ様式に当てはめようとすると、金額の欄だけが空いたまま残ります。決裁が進まなくなるのは、この欄の前です。

社内の採用の決裁は、募集の起案、採用手法の選定、費用の申請、採用の決定という順に並びます。人材紹介を使う場合、このうち費用の申請だけが先へ進めなくなります。

起案した側に差し戻しが起きやすいことは、調査にも表れています。従業員数100名以上の企業で過去3か月以内に3回以上稟議を起案した107名のうち、差し戻された経験があると答えた人は97.2%でした(エイトレッド『企業の稟議業務の負担とAI活用意向に関する実態調査』)。

差し戻しの往復は、そのまま募集の開始を遅らせます。金額の根拠を問われてから調べ直す進め方では、同じ往復が次の募集でも繰り返されます。

会議室のテーブルに置かれた申請書類に、ペンを持った手が記入している様子
写真: Cytonn Photography / Pexels

契約の決裁と支出の決裁を2段に分ける

稟議書の様式を自分で変えられる担当者は、ほとんどいません。変えられるのは、1本に詰め込んでいた起案を分ける側です。

ここでは、契約の決裁と手数料の支出の決裁という2段の立て方を解説します。

1段目は、紹介会社と基本契約を結ぶことの決裁です。成果報酬型の契約では、契約を結んだ時点でも、求人を預けた時点でも請求は立ちません。

請求が立つのは対象者の入社が決まった枠だけのため、1段目で予算の枠を押さえる必要はありません。金額の欄には、締結によって支出が発生しないことと、手数料が発生する条件を書きます。

条件は、各社があらかじめ国へ届け出ている手数料表に書かれています。契約前に書面で受け取れるため、1段目の起案はこの1枚でそろいます。

1段目がこの形になると、契約は増やす方向で起案できます。本数が増えても締結の時点で支出は立たないため、複数社分をまとめて1本の稟議に載せられます。

出会える候補者の幅は、依頼先の数だけ広がります。各社が抱える登録者の顔ぶれには偏りがあるため、1社だけで起案すると、その会社の登録者の範囲に募集を閉じることになります。

何社までを上限に置くかの線引きは、契約する紹介会社の社数の目安で整理しています。

届出制手数料は、求人の申込みを受理した時以降に手数料表に基づく者から徴収できる仕組みです(厚生労働省『職業紹介事業の業務運営要領』第6 手数料)。依頼の段階で手数料を定めている会社もあるため、支出が発生しないと稟議に書く前に、手数料表で発生の条件を確かめる姿勢が重要です。

2段目は、手数料の支出の決裁です。採用が決まって入社日と年収が確定した時点で、手数料の額は1つの数字になります。

ここで初めて、金額の欄は通常の支出と同じ形で埋まります。算定の基礎になる金額、手数料表に定められた率、支払の期日を並べて書けます。

2段目を起案する時点では、採りたい人を採るという判断そのものは終わっています。決裁者が確かめるのは、確定した額が1段目で示した条件の範囲に収まっているかという1点です。

ノートパソコンの画面を見ながら、2人の担当者が書類を指して話し合っている様子
写真: Karola G / Pexels

決裁者の問いに先回りする材料

2段に分けても、決裁者からの質問はきます。問いの中身はおおむね決まっていて、どれも契約前に答えをそろえられます。

ここでは、決裁者が聞く3つの問いと、それぞれに当てる材料を解説します。

役員や経営者から返ってくる問いは、以下の3つです。

  • いくらかかるのか
  • 払ったあとに辞めたらどうなるのか
  • いつ払うのか

1つ目に当てるのは、各社の手数料表です。手数料の種類と額、算定の方法を明確に定めることが届け出の側で求められているため、想定年収を入れれば上限の目安はその場で出せます。

令和6年4月からは、手数料表と返戻金制度に関する書面を、自社のホームページなどの適切な方法で情報提供できることになりました(厚生労働省『職業安定法施行規則改正(令和6年4月)』)。問い合わせを待たずに読める会社も増えています。

2つ目の問いには、返戻金制度の有無を当てます。入社した人が早い時期に退職した場合に手数料の一部が戻る定めがあるかどうかは、手数料表と同じ書面で確認できます。

戻る場合でも、対象になる期間と割合は会社ごとに違います。2社以上と契約するなら、社名と期間だけを1行ずつ書き出した表を1段目の稟議に添えると、質問が1往復で収まります。

3つ目には、契約書の支払の条項を当てます。起算日の置き方と期日は各社の契約で定まるため、締結前に受け取る契約書の案から拾えます。

条項そのものの中身は人材紹介の契約書で読む3条項、入社日を起点にした期日の扱いは手数料の支払い時期の管理で扱っています。

材料を先にそろえておく効果は、日数に表れます。電子契約サービスの利用者312名への調査では、稟議の申請から承認が終わるまでに2〜3日かかると答えた人が52.5%で最も多くなりました(弁護士ドットコム『社内稟議の実態調査』)。

問われてから調べ直すと、1往復ごとにこの日数が積み上がります。書面を先に取り寄せておく手間のほうが、結果として軽く済みます。

稟議を通した契約を、動かす段まで持っていく

複数の紹介会社の運用最適化で、稟議を通した契約が推薦の件数に変わる状態へ寄せられます。サービス概要資料では、各社への募集条件の共有、推薦を受けた日の返事、社ごとの決定実績の集計をどう仕組みにするかがわかります。契約と支出で決裁を分ける起案の進め方も、資料内でご確認いただけます。

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稟議が通ったあとは、作業の中身が変わります。契約した各社へ募集条件を同じ内容で渡し、届いた推薦に当日のうちに返し、社ごとの決定実績を押さえていきます。

エージェントコントロールとは、この3つを続ける作業を指します。進め方は人材紹介の運用を横断で束ねる方法にまとめています。

ただし、起案と社内の調整を兼任で抱えた担当者が、社ごとの連絡と条件の手直しを毎週続けるのは難しくなります。一括エージェントでは、社内の起案は担当者の手元に残したまま、社外とのやりとりだけを人とAIで代行します。

各社とのやりとりと候補者の進み具合はAIが1画面に集約し、募集条件の手直し、担当者との交渉、推薦を受けた日の返事は人が受け持ちます。いま取引のある紹介会社を外す必要も、別の会社へ乗り換える必要もありません。

この運用代行を導入した医療機関の例では、取引先を1社も替えないまま届く紹介が約2倍へ増え、2か月で看護師2名の採用が決まりました。医療の職種で得た数値のため、ほかの職種でも同じ結果になるとはかぎりません。


まとめ|金額が確定する前と後で、決裁を分ける

本記事では、稟議書の金額の欄が埋まらない理由から、決裁を2段に分ける立て方と決裁者の問いにそろえる材料までを整理しました。要点を3つに絞ります。

  • 稟議書の様式は支出の総額が事前に決まる取引を前提にしており、成果報酬の手数料は当てはまらない
  • 1段目は支出が発生しない契約の決裁、2段目は入社で額が確定した手数料の決裁として立てる
  • 決裁者の3つの問いは、手数料表と返戻金制度の書面、契約書の支払の条項でそろえられる

1段目の起案であれば、契約前に受け取った手数料表に目を通すところから着手できます。

オフィスの机に広げた書類とノートパソコンの前で、資料に目を通している人の手元
写真: Kindel Media / Pexels

とはいえ、通した契約の本数だけ増える連絡と条件の手直しに、毎週の時間を充てられる担当者は多くありません。手が回らない期間が続けば、決裁を取った契約も動かないまま残ります。

一括エージェントが請け負うのは、決裁を取った契約先を動かす側の運用最適化です。各社への条件の共有、推薦を受けた日の返事、社ごとの決定実績の集計までが担当する範囲にあたります。

稟議を通した契約が、採用の決定まで進む状態へ寄せていく順番になります。

よくある質問

Q. 人材紹介の稟議では、金額の欄に何を書けばよいですか

起案を2本に分けて、それぞれ別の内容を書きます。1本目の契約の稟議では、成果報酬型のため締結によって支出が発生しないこと、手数料が発生する条件が対象者の入社であること、算定の方法が各社の届け出た手数料表に基づくことを書きます。2本目の支出の稟議では、確定した算定の基礎と手数料表の率から出した実額、支払の期日、返戻金制度の対象になる期間を書きます。上限額を1つの数字で求められる様式であれば、想定年収の幅の上側で計算した額を上限として示し、確定額は2本目で報告する形にできます。

Q. 複数の紹介会社と契約する稟議は、1社ごとに出す必要がありますか

1社ごとに分ける必要はありません。契約の本数が増えても、成果報酬型なら締結の時点で支出は立ちません。そのため複数社分をまとめて1本の起案に載せられます。添える資料は、社名と手数料の算定方法、返戻金制度の対象期間を1行ずつ並べた表で足ります。実際の支出は入社が決まった会社について個別に決裁を取るので、まとめて起案しても金額の管理が粗くなることはありません。逆に1社だけで起案すると、その会社が抱える登録者のなかに条件の合う人がいない時、次の手が残りません。

Q. 稟議が通らない場合、人材紹介の利用は見送るべきですか

見送る必要はありません。通らない原因は紹介という手法そのものではなく、金額が確定しない支出をどう説明するかという起案の側にあることが大半です。契約の決裁で支出が立たないことを示し、手数料の決裁を入社の確定後に回すと、判断の材料は決裁者の手元にそろいます。それでも予算の総額に上限が引かれている場合は、採用の件数そのものを絞る話になるため、契約を解く方向とは別の論点です。無理が出にくいのは、契約を持ったまま、預けた求人が動くよう運用の側を整える進め方です。推薦への返事を当日に戻し、募集条件を各社へそろえて渡すだけでも、同じ依頼先から決まる件数は動きます。


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